中堅中小企業の経営基盤改革術

丸投げ力――先進ユーザーは知っているシステム導入の王道か(2/4 ページ)

» 2008年06月19日 08時00分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

「丸投げ」の有効性

 逆に、複数の製品を前にしても自分たちにはその違いを正確に理解するのは難しい、そこに時間と手間を掛けるならば、いっそ導入を依頼するパートナー企業に選択の判断はすべて任せてしまったという成功事例もある。当然ながら、この場合はパッケージ製品の選択だけでなく、そのあとの導入プロジェクトも大きく、その選択を依頼したパートナーに依存することになる。

 導入を依頼する企業に大幅に依存する、つまり「丸投げ」に近い状況でプロジェクトを進めることは推奨されないのが普通だ。その理由の1つは、丸投げすることで構築するシステムがブラックボックス化してしまい、トラブルが発生しても自社で手が付けられない状況が生まれるからだ。そうなれば、最初の計画では安価なコストで導入できるはずだったものが、ベンダーの薦めるままの拡張を認め、結果的に莫大な開発費用が発生しコストが大きく膨らんでしまう。

 あるいは、市場の技術動向とは関係なく、依頼したベンダーが得意な技術だけを採用してしまい、やっとの思いでシステムが構築できても、出来上がったときにはすでにシステムが陳腐化しているなんてこともある。

 だが、実際に企業の話を聞いてみると、丸投げ自体が悪いものではないことが分かる。ユーザーが技術スキル不足を理解し、足りないところを信頼できるパートナーに委ねる。その結果難しい技術的領域に踏み込まずに済み、本来の自分たちのビジネスに注力できるという事例があるのだ。

 丸投げで最も重要なのが、信頼できるパートナーに任せることだ。複数のユーザー企業に話を聞いてみると、駆け引きをせず、パートナーに全幅の信頼を置いていることが分かった。見積もりすら取らず、むしろ自社の予算を可能な限りパートナーにも開示し、中長期的なコスト計画を共有し、プロジェクトを進める。ユーザー企業とパートナーが一体となり、ERPパッケージを導入し、活用することにかんしていわば運命共同体となり、同じ価値観でプロジェクトが進められるているのだ。

 これが実現しているケースには、パートナー企業のエンジニアがしっかりとユーザー企業に入り込んでいる場合が多い。ERP導入に成功している企業の担当者には、パートナー企業のエンジニアのことを「まるで自社の社員のように働いてくれる」と評する声もあった。エンジニア個人のスキルに依存する面もあるかもしれないが、パートナーとの中長期的で良好な関係構築が前提として求められるところであろう。

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