中堅中小企業の経営基盤改革術

中堅中小企業のタレントマネジメント戦略人事戦略コンサルタントの提言(5/5 ページ)

» 2008年07月01日 08時00分 公開
[三城雄児,ベリングポイント]
前のページへ 1|2|3|4|5       

報われ感の具体例

  • トータルリワード向上の具体例1――社内向けコーポレートブランドの強化

 中堅中小企業において、有能な従業員を獲得・定着させるためには、社内ブランディング強化が必要不可欠である。昨今は従業員の価値観も多様化し、終身雇用を前提としない働き方を望む人材も増えてきている。「会社とは何か」「会社は誰のものか」「働くとはどういうこと」といった話題が多く議論されるようになっている。職場に集う社員に会社が何を提供しているのかを経営者と人事部門はもう一度見直す必要がある。従業員が納得し、愛着を感じる状況を組織の中につくり出さなければならない。

  • トータルリワード向上の具体例2――コア・バリューの明示

 コア・バリューの明示では、サウスウェスト航空の「人を楽しませる」が有名だ。従業員はこのコア・バリューに基づき顧客に接する。コア・バリューは多様な価値観を持った従業員が自律的に行動するために不可欠なものである。コア・バリューは従業員向けに与えられたメッセージであり、社内外に向けて発信されている企業理念に合致するように設定される。従業員の行動を細かく規定するのではなく、あくまで考え方を示したものであるという点で、就業規則などとは異なる。

 コア・バリューは明文化するだけでは意味がない。その考え方をトップが語り続け、具体的な事例があれば皆で共有していくものだ。明文化されたコア・バリューは具体的なストーリーを伴ってはじめて、企業に価値をもたらす。e-ラーニングを活用することで映像付きのコアバリュー・ストーリーを全社員に配信する取り組みも有効だ。コア・バリューに基づく目標管理を行う企業もある。コア・バリューに基づく行動を目標管理シートに記入させることで、個人業績や短期成果を追求しがちな目標管理の弊害を緩和することができる。

【図4】コア・バリューの明示

 なお、コア・バリューを用いた具体的な企業変革の考え方や事例は、本特集の第5回に述べる予定である。

  • トータルリワード向上の具体例3.:評価制度、ITオフィス環境など

 トータルリワード向上のための方策は、そのほかにもさまざまなものが考えられる。本特集の第3回では人事評価制度の事例を、第4回ではオフィス環境を改善するICTの事例を紹介する。どちらもトータルリワードを高めるために有効なものである。

 ここまで、中堅中小企業の採用と定着化の戦略について、幾つかの考え方と事例を紹介してきた。本稿を参考に、各企業が有能な人材の獲得競争に勝利し、長期的な業績向上を実現してくれれば嬉しい。

過去のニュース一覧はこちら

著者プロフィール:三城雄児 ベリングポイント 組織・人事戦略チーム マネージャー

組織・人事戦略の構築支援、企業理念・コア・バリュー浸透支援、人事制度構築・導入・運用支援、目標管理・業績管理体系の構築、企業内教育体制の整備、e-ラーニング導入・活用、管理職の意識改革、役員制度改革など、組織・人事にかかわるさまざまなコンサルティングプロジェクト経験を有する。また、組織・人事に関して、積極的な講演・執筆活動を行っている。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。


オススメ関連記事 -PR-

「手軽に導入できるSAP」を中堅企業に届ける

「SAPはハードルが高い」というイメージが払拭されつつある。長期的な費用を考慮すると、SAPは実は安価と考え、SAP Business All-in-Oneを導入する中堅企業が増えている。SAPが提供する実現機能確認シートに注目だ。一覧をチェックすれば購入前に費用の詳細が分かる。機能追加の際の費用も「見える化」できる。


なぜSAP ERPを導入するのか――女性衣料品通販ピーチ・ジョンの場合

ピーチ・ジョンは、女性向け下着などのカタログ通販で人気を集める。ピーチ・ジョンが、2009年の稼働を目指してSAP ERP導入プロジェクトに取り組んでいる。ネット販売店舗が急拡大し、継ぎ足すように対応してきたシステムをSAPでどう変えていくのか。2007年11月のワコールの完全子会社化に伴い内部統制強化も課題となっている。


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ