シマンテックは企業市場向け戦略を発表。パートナー支援強化や企業顧客に対する同社ブランドの認知向上を目指す。
シマンテックは7月9日、国内における企業向け市場戦略を発表した。パートナー支援を柱に、「基礎固めの1年」という方針を掲げる。
冒頭、4月に新社長へ就任した加賀山進氏はSymantec全体での事業動向を報告。同社ではVeritasを代表例に過去10年間で70社以上の企業との合併、買収を進めてきた。加賀山氏は、「セキュリティやストレージなどITインフラ周辺では売上高トップの独立系ソフトウェア企業としての地位を確立し、年平均9%の安定した成長を続けている」と説明した。
近年は企業内で管理されるデータ量の増加や内部統制などに基づく情報管理の強化、機密情報を狙うサイバー犯罪の多様化を受けて、ストレージや情報保護に対する企業ニーズが急増。「情報主導型のソリューションが重視されている」(加賀山氏)という。従来のコアビジネスであるストレージ管理やバックアップ、セキュリティ対策に加え、今後は情報漏えい対策や電子メール管理、仮想化といった成長性のある市場で製品展開を強化していく。さらに、クラウドコンピューティングやSaaS(サービスとしてのソフトウェア)といった将来性が期待される分野へも率先して取り組むとしている。
一方、国内市場の動向は「全社の動向と比較して停滞ムードにある」と加賀山氏。同氏によれば、顧客満足度(CS)の低下や企業顧客における「Symantec」ブランドの認知不足が大きな要因になっているという。「コンシューマー市場では“Symantecといえばノートン”というイメージが浸透している。だが、売り上げ構成では企業が70%(全社規模)を占め、国内でも企業顧客の強化が課題」(同氏)と説明した。
2009年度の事業展開では、サービス品質の向上やパートナーのビジネスを支援する体制を拡充していく。具体的には、製品に脆弱性が見つかった場合に修正プログラム作成などの緊急対応をする「Customer Focused Team」の拡充や、パートナーへの技術情報の提供強化、Webを利用したユーザーフォーラムの開設などに着手する。7月末には仮想化環境におけるシステム検証を行う「バーチャリゼーションラボ」を開設する。
このほかにも、コールセンターにおける製品問い合わせ窓口の一本化や、パートナー企業が利用する製品検索や発注、サポートなどの取引プロセスの改善にも取り組むとしている。
販売面では、単体製品の展開からソリューションサービスの展開へシフトさせていく方針だという。「例えば電子メールでは、ウイルスやスパム対策からアーカイビングまでを1つのソリューションとして提供することが求められる」(同氏)。特に過去数年間の合併・買収で取得した製品やサービス技術の展開は、直販などを中心にシマンテック主導型の販売スタイルを導入していく。
「ベンダー側が責任を持って新規製品の市場を開拓することで、パートナーの参入リスクを軽減したい。パートナーは普及期に入って以降のフェーズに注力する体制にすることで、安定した収益を築けるようにしていく」(同氏)。これにより、現在は470人規模となっている国内の人員体制を拡充する計画だ。
同氏は、「数年後と言わず、短期間で国内ビジネスを世界と同様の成長路線(9〜10%)に持っていきたい」と目標を話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.