Vistaは企業市場で死に体――調査であらためて浮き彫りに

Windows Vistaのビジネス市場での不人気が数字で明らかになった。

» 2008年07月17日 08時00分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 既に分かっていたことが確認できるだけだが、新しいデータを紹介しよう。

 1カ月ほど前、Windows Vistaの採用状況に関する新しいデータを入手した。2008年5月と2007年4月に行われた調査結果を比較したものだ。わたしはMicrosoftのパートナーカンファレンスやAppleのiPhone 3G発売など、幾つかの大きなイベントが終わるのを待ってから取り上げようと考えた。E3の閉幕までもう1週間待とうとしていたが、待つのはやめにしようと思い立った。

 前年との比較(調査で使われている用語では、Wave1とWave2の比較)によるこのデータは、企業におけるVistaの採用が寂しい状況であることをあらためて突きつけている。厳しい数字となっており、わたしが講釈好きだとしても、独自の解釈を加える余地はあまりない。そもそもわたしは講釈好きではないし、データは常に事実を物語るだろう。この場合は冷酷な事実だが。

 Microsoftにとって本当に悪いニュースは、Windows XPが動作するビジネスPCの割合が、1年前に比べて増加しており、その割合の伸びが、Vistaが動作するPCの割合の伸びに比べて3倍にも上ることだ。

 もっと悪いかもしれないニュースもある。Vistaを待っていたはずの企業(XPより前のWindowsを使っていた企業)の大部分が、VistaではなくXPに移行したことだ。Microsoftは、Windows 2000やそれ以前のバージョンのユーザー企業がVistaにアップグレードすると見込んでいた。だが、Vistaに移行した企業よりもXPに移行した企業の方がはるかに多かった。

businesses' OS adoption

 しかも、大部分の企業では2008年末時点で、Vistaが動作するPCの割合は9%にとどまりそうだ。この数字は2010年末でも28%にしかならない見通しだ。

 つまり、Windows XPがこれからも主流を占めることになる。Vistaはレイムダック(死に体)化しており、わたしは、3億ドルを掛けたMicrosoftの広告キャンペーンが、果たして所期の効果を達成できるのか疑問に思い始めている。むしろ、こうした広告はVistaへの弔鐘になりそうだ。

 これまで再三述べてきたように、Vistaは悪いOSではない。しかし、Vistaは評判が悪く、わたしは最近、あばずれ娘になぞらえた。Vistaは派手なユーザーインタフェースで目を引くが、実際に選ばれるのは堅実で控えめなXPだ。Windows XPはあまりわがままな要求をせず(ハードウェア要件があまり厳しくなく)、(User Account Control機能があるVistaとは違って)それほど文句も言わない。

 否定的な認識がVistaの普及を妨げており、このOSを見る目は一段と厳しくなっている。2007年4月と2008年5月のどちらの調査でも、ITマネジャーの49%がVistaへの移行に「強く反対」と回答した。この2回の調査で、Vistaへの移行に対するIT部門以外の企業回答者の意見では、「移行してもしなくてもよい」または「やや賛成」に代わって、「強く反対」という声が大きくなった。2007年4月調査ではVistaへの移行について、企業の管理職の54%が「移行してもしなくてもよい」と答え、11%だけが「強く反対」としていた。2008年5月調査では、企業の管理職者の51%がVistaへの移行に「反対」と答え、その30%が「強く反対」と答えた。

Windows Vista Adoption

 また、2007年4月の調査では、IT技術スタッフの22%がVistaへの移行に「強く反対」と答えた。13カ月後、この数字は55%に跳ね上がった。「やや反対」または「強く反対」と答えたエンドユーザーの割合の合計も、同じ期間に21%から53%に伸びた。

 否定的な傾向がますます強まっているこうした企業の認識を、広告キャンペーンで変えることができるのか。このあばずれ娘に、日曜の教会にふさわしいようなドレスを着せておしとやかに見せようとしても、かなり手遅れだ。身体中に入れ墨やピアスをしていて、優しい気持ちなど持っていないのだから。Vistaは多くの人にとって極端過ぎるものであり、その見方は今さら変わらない。

 残念なことだ。Vistaにはいろいろいいところもあるからだ。ガードが固いため、多くのウイルスやマルウェアを寄せ付けない。自分で自分の身を守るのは、XPも見習える点かもしれない。ボットネットの攻撃にも簡単には負けない。

 わたしは陰口をたたかれたり、物笑いの種になっても、Vistaと付き合っていくつもりだ。だが、Vistaは企業では、冷たい目で見られるだけだろう。

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