CRMの新潮流

客を探せ――格闘する日本企業CRMの新潮流(2/4 ページ)

» 2008年08月01日 04時56分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 営業代行という斬新なビジネスを手がける企業がある。東京・世田谷のブリッジインターナショナルは、IT最大手のある企業の営業を代行している。

 吉田融正(みちまさ)社長は「営業組織におけるミスマッチをわれわれが解消する」と意気込む。企業の営業組織における典型的な問題として、営業担当者が大口顧客にばかり時間を費やしてしまい、売り込むべき中堅中小規模の顧客への「種まき」に手が回らないといった状況があるという。そのため「刈り取り」の季節、すなわち次の四半期などに営業案件の絶対数が足りないといった事態が起こっている。

日本IBMなどでCRMに携わってきた吉田社長

 こうした問題をブリッジは解決してくれるという。企業側の社員は従来どおり大口顧客の対応に当たる一方で、ブリッジ側は中堅中小規模の顧客向けの営業を代行する。営業のスペシャリストを正社員として育て、大口ではない「ロングテール」の顧客向けに電話や電子メールなどで営業を仕掛けるのがブリッジの売りだ。

 これにより、IT最大手企業は、大口顧客だけでなく、中堅中小規模の顧客候補にも満遍なく営業を掛けられるようになった。「IT企業とわれわれが完全に一体となって営業活動にあたっている」(吉田社長)。漏れなく顧客をすくい取るという現実的な発想の営業改革手法として注目できるビジネスだ。

徹底したウェブ分析で見抜く

 通販などインターネットを活用したビジネスが台頭してきた。ネットの最大の特徴は、顧客の動きを事細かに把握できる点といえる。米Omnitureは通販サイトやネットメディア向けに、サイトへのアクセス状況を分析できるツール「SiteCatalyst」を提供している。サイトへの訪問者の経路や離脱ポイントなどを把握できる。

米RedhatなどがSiteCatalystをCRMツールとして利用していると話す水嶋氏

 Omnitureの日本法人でマーケティングを担当する水嶋ディノ氏は「ユーザーの動きを細かく追っていくと、想像もしない発見をすることがある」と話す。

 同社は自社のマーケティングのためにある調査を実施したという。インターネットから見込み顧客を獲得するための手法として、ホワイトペーパーのダウンロードサービスとウェブセミナーのどちらが効果的かを調べるというものだった。結果はホワイトペーパーが27%、ウェブセミナーが19%で、ホワイトペーパーの方が見込み顧客を獲得しやすいという結果になった。

 だが、さらに数字を追うと事情が異なった。獲得した見込み顧客が商談にまで応じてくれた割合はホワイトペーパーの0.95%に対し、ウェブセミナーの方が2.42%と大幅に高かった。商談から成約に至った率もウェブセミナーの方が80%高かった。平均成約金額もウェブセミナーの方が2倍も大きかったという。一見するとホワイトペーパーに軍配が上がりそうなところだが、根気良く数字を分析することで、ウェブセミナーの方が効果的であることが分かった。

 顧客の動きを実績数値ベースでどこまでも追いかけられるのは、インターネットの特性といえる。

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