ソフトウェアライセンスを把握――しかも社員に嫌われず良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(4/5 ページ)

» 2008年08月08日 08時00分 公開
[木村尚義,ITmedia]

摘発、密告を奨励!?

 [悪い管理者・田中一郎]は、レンタヒューマンのソフトウェア資産管理の責任者である。先ごろ全社ポリシーとして違法コピーを禁止することが決定した。一郎は違法コピー防止責任者として全社のコンピュータにインストールされているソフトウェアを把握することにした。方法としては、あらかじめ協力を要請すると、不正が隠されることがあるので、すべて抜き打ちで行うのだ。コンピュータを利用している社員すべてが対象だから大変だ。

 一郎は何気ない様子で、社内をうろつき、いきなり社員を立たせてインストールされているソフトウェアを調べる。作業中であろうとなかろうとお構いなしだ。何しろ会社の不正を防止するためなのだ。社員にどんなに急ぎの仕事があっても、一郎の管理に協力するべきなのだ。何しろ、一郎の仕事は、違法コピーを取り締まるためなのだ。そのためには、どんな手段も正当化されるはずだ。最近は一郎が近くに来ると、職場がピリピリするのが分かる。結構なことだ。職場に緊張感がみなぎっている。ところが、一郎がいない場所では緊張感が持続していないらしい。

 社員には常に緊張感を維持させたい一郎は、違法コピー摘発隊を組織することにした。1人で巡回するよりは、数人のほうがより監視が強化できる。これで、「もしかすると将来起こるかもしれない違法コピー」が摘発できればなお良い。

 一郎と摘発隊は社内では浮いた存在になっている。しかし、多少嫌われるのも仕方がない。これも違法コピー摘発責任者の努めである。重責を担う者はいつも孤独だと一郎は思う。しかし、あまり警戒されてしまうと、摘発効果が薄れる。そこで、一郎の考えた次の手段は、密告制度である。社員が社員を監視すれば、一郎が余り手間を掛けなくても、違法コピーがなくなるはずである。違法コピーはもちろん、将来違法コピーの危険性がある人物を通報すると報奨金が出るという。

 それからというものレンタヒューマンでは、社内外を問わずあまり社員同士での会話がなくなってきた。何しろ、思いも寄らない一言で、将来危険があるとみなされ通報の対象になってしまうのだ。自宅で新しいコンピュータを買ったと話したら、会社のソフトウェアを違法コピーしようとしていると通報された社員がいた。また、気に入らない社員がいると、違法コピーをしそうな顔をしていると通報される。

 すでに、レンタヒューマンが倒産してしまった今だから明かすのだが、会社の業績が急速に悪くなったのは、田中一郎がソフトウェア資産の管理者になってからだ……。

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