ランキングで見る日本の「ベンチャー不在」Next Wave(2/2 ページ)

» 2008年08月29日 13時10分 公開
[幾留浩一郎,ITmedia]
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ITベンチャーがリード役果たす米国

 日米に関してさらに詳しく比較してみる。この2000社のリストから、米国と日本でそれぞれトップ200社を選び、産業別に時価総額を集計した結果は以下の通りである。

 米国は、エネルギー産業を筆頭に、医薬品、金融に次いで4番目にソフトウェア&サービス部門が入っているのに対して、日本は耐久消費品(自動車産業など)がトップで、家電などのハードウェア産業、金融、貿易という順に続いている。

 IT産業は、実際にはもっと幅広い産業分野に渡ってはいると思われるが、ここでは最も関連が深いと思われる「ソフトウェア&サービス」産業部門に限定して比較してみる。ソフトウェア&サービス産業は米国の場合は4位になるが、日本の場合はどこにあるか分からないほど低いことが特徴になっていることが分かる。

 さらにそれぞれの国のランキング入りしている企業の詳細をみると、米国の場合は、「ソフトウェア&サービス」産業としてランク入りしている企業が、Microsoft、IBM、Google、Yahoo!、VMware、Adobe、Electronic Arts、Symantec、CA、Intuit、EDSなど沢山の会社がみつかるが、日本の場合この産業部門に分類されてランク入りしているのはSoftbankがたった1社だけである。

米国の産業の場合(Forbes「The Global 2000」より作成)
日本の産業の場合(Forbes「The Global 2000」より作成)

 この部門でランク入りしている企業名を見ると、もう1つ特徴的なことは、ベンチャー企業として始まった企業が多いことである。実際、ほとんどが設立から30年以内の若い企業ばかりである。またCiscoやAppleなどハードウェア部門に分類されている企業も含めると、かつてのベンチャー企業はもっと多くなる。Amgenなどのバイオ系のベンチャーも入れると、ランク入りしている企業の3割程度は設立から30年以内の企業となっている。

 Forbesのランキングは世界の上位の2000社だけであったが、証券業のCharles Schwabのサイトで公開されている情報では、米国で上場している企業全体を見ることができる。外国企業でも米国に上場している企業は含まれるために、米国企業という定義からは若干外れるものも含まれるが、数は少ないので無視できると思う。

 ここでリスティングされている企業は約8000社あるが、産業別に時価総額を集計し上位から10部門をランキングするとと以下の表のようになっている。

Charles Schwab社の公表データより作成

 Forbesの分類とちょっと異なるために単純な比較はできないが、米国の上場企業全体ではIT産業が時価総額のトップの産業である。Schwabではさらに小分類に分けて分野ごとの集計を見ることができるので、IT産業に関わると思える小分類を時価総額順に見ると、以下の表のようになる。

Charles Schwab社の公表データより作成

 そしてそれぞれの部門でランキングを見ると、特にソフトウェア部門やインターネット関連部門は、Microsoft、Google、Oracleなどかつてのベンチャー企業ばかりであり、IBMなどの旧企業などが少数派である。ランキングを下の方に見て行くと、ベンチャー企業が延々と名を連ねている。

 これらの結果を見ると以下のような結論が出せると思う。

(1)米国はIT産業が最も重要な存在の1つになっている。

(2)IT産業の成長を支えているのがベンチャー企業である。

 1980年頃、米国の経済学者のアルビン・トフラーが書いた「第三の波」という本が日本でも大人気になった。当時大学生だった私もこの本を読んだ覚えがある。確か「第3の波」とは「情報化」で、第2は「産業革命」に始まる工業化の波だったが、人間社会は今後急速に情報社会へと変り、重要な産業も情報産業へと移行していくという内容だった。この本が出版されてから約30年後の今日、米国では「IT産業」が、分野別の時価総額では筆頭の産業分野へと成長し、The Global 2000に名を連ねるトップ企業の中の割合でもかなり目立った割合を占めるまでになった。トフラー氏が予言した通り、産業構造も過去の「工業」から脱却し「情報」へと新旧交代が確実に進行しているようである。

 The Global 2000の日本企業の産業分布からは、産業構造の「情報化」のトレンドがまだまだ見えていない、日本でももっと活発にIT産業を育てたいものである。

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プロフィール

いくどめ・こういちろう AuriQ Systems, Inc. (カリフォルニア州パサデナ) CEO 兼オーリック・システムズ株式会社 社長。リアルタイムWebアクセス解析システム「RTmetrics」の開発元。米国と日本のIT産業において25年のビジネス経験を持つ。


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