MosaicからChromeまで――Webブラウザ戦争の来し方行く末今日から使えるITトリビア(1/2 ページ)

Googleは、新しいWebブラウザ「Google Chrome」を発表した。長い間、マイクロソフトのInternet Explorerが独占してきた市場に風穴を開けることができるか注目される。Webブラウザ市場の歴史と展望をおさらいしよう

» 2008年09月06日 08時00分 公開
[吉森ゆき,ITmedia]

Webブラウザといえば「モザイク」だった時代

 今の若い人たちは、物心がついたころからインターネットが利用できて、Webブラウザでさまざまな情報が検索できる時代に育っている。だから、Webブラウザは昔からずっと存在するような感覚があるが、実はWebブラウザが生まれてからまだ18年ほど。今の大学1年生と同級生だ。

 Webブラウザの最初の開発者は、イギリスのティモシー・ジョン・バーナーズ・リーだ。彼は、ベルギーのロバート・カイリューらとともに1989年、欧州原子核研究機構(CERN)の文書をデジタル化するために、ハイパーテキストのシステムを作った。これが“World Wide Web”へと進化するもとになったものだ。バーナーズ・リーは、このハイパーテキストシステムを実行するために、ハイパーテキストのプロトコルであるHTTP、アドレスを表すURL、ハイパーテキストの文法をルール化したHTMLを設計した。そして、それらとともに開発したのが、世界初のWebブラウザだった。1990年のことである。この技術はその後、1993年になってからCERNによって無償で公開されたことで世界中に広まることになる。

 バーナーズ・リーが開発したWebブラウザは、テキストの表示を中心としたものだったが、現在のように画像とテキストが混在するWebブラウザを開発したのが、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にあるスーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)である。そのWebブラウザの名前は「モザイク(Mosaic)」。NCSAに所属していたマーク・アンドリーセンらが1993年に開発した。

画像を扱えるようになった初のWebブラウザ「Mosaic」は、現在でもNCSAサイトにアーカイブされている

 「ネット」というとインターネットではなく、PC通信を指していたこの時代、筆者が最初に利用したのもモザイクだった。16ビットOS上で動くモザイクの動作はまだ不安定であり、初期のバージョンでは、日本語は文字化けして表示することができなかった。

ネットスケープの天下だった5年間

 1993年にインターネットの商用利用が解禁されると、マーク・アンドリーセンらはNetscape Communicationsを起業し、モザイクをベースにしたブラウザ「Netscape Navigator」を開発、限定版の無償提供と製品版の販売を開始する。ここから始まったのが、ネットスケープの時代だ。

 同時期に発売となったマイクロソフトのWindows 3.1では、インターネットはサポートされなかったものの、米ネットマネージが開発した、DOS上で稼働するTCP/IPドライバ「Chameleon」を組み込んで、Netscape Navigatorを利用することが、先進的なPCユーザーの間で流行した。1995年には、Windows 95が登場してOSがTCP/IPをサポート。これにより、Netscape NavigatorがWebブラウザのデファクトスタンダードとして君臨した。当時のシェアは80%を優に越えていた。

 Windows 95が登場した当時、マイクロソフトはWindows 95のコンパニオンツールを収録した「Microsoft Plus!」というパッケージを販売。ここに収録されていたのが、「Internet Explorer(IE)」である。IEは、マイクロソフトがモザイクのライセンスを受けて独自に開発したWebブラウザだったが、初期バージョンでは、機能も性能もNetscape Navigatorにはるかにおよばなかった。

 同じ1995年、Webブラウザの世界を変える新技術がサン・マイクロシステムズから発表された。「Java」である。サンは、Javaによって開発されたWebブラウザ「HotJava」を公開し、Javaアプレットによるアニメーションなどのデモを盛んに行った。1996年には、Netscape NavigatorもIEも、Javaをサポート。IEはこのときに「3.0」にバージョンアップし、ようやくNetscape Navigatorの水準に追いついた。

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