1998年までの5年間、Webブラウザ市場は、まさにネットスケープの天下だったといえる。ところがWindows 98が登場して、IEがWindowsのエクスプローラと統合されると、ネットスケープの雲行きが怪しくなってくる。危機感を抱いたネットスケープは、Windows 98の発売を前にしてOSとWebブラウザを抱き合わせ販売することが独占禁止法に違反するとして提訴している。
しかし、結果的にはWindows 98はそのまま登場。OSの普及とともにIEのシェアは伸び続け、1999年になるとNetscape NavigatorのシェアをIEが超える。その勢いは止まらず、ついには90%以上のシェアをIEが持つことになる。一方のネットスケープは、1998年にAOLによって買収されてしまう。
IEが普及したことで、WebサイトもIEのみを想定したものが増える。そのため、Windows以外のOSの利用者にもIEのニーズは高まり、アップルがMac OSにIEを組み込んだり、Solaris版、HP-UX版のIEが登場したりするまでになった。現在は、Windows以外のプラットフォーム向けのIEはなくなったが、寡占状態は相変わらず続いている。
このIEの牙城に対し、幾つかのWebブラウザが市場獲得を挑み、一部でわずかなシェアを獲得している。1996年に発表されたシェアウェアに端を発するノルウェー・オペラソフトウェアの「Opera」は、PC以外のプラットフォームに移植しやすいWebブラウザとして開発され、任天堂の「Nintendo DS」「Wii」などにも採用されている。
Netscape Navigatorはその後、オープンソースのMozillaプロジェクトへと開発の主体を移していく。現在はNetscape Navigatorそのものの開発は中止され、Mozillaプロジェクトを支援するために2003年にAOLが設立した「Mozilla Foundation」によって「Mozilla Firefox」が提供されている。
アップルは、2003年にIEから独自開発の「Safari」へと移行。現在は、Windows版のSafariも登場しているものの、その性格上、アップルファンを中心としたユーザー層の獲得に限られている。
そして、2008年にグーグルが発表したのが、「Google Chrome」だ。β版の公開だが、シンプルなデザインと高速性がその特徴。ただし、IEの牙城を崩すには、まだ相当に高い壁がある。ほかのWebブラウザも、IEに比較して優れた点は多いものの、IEに太刀打ちできないのは、ActiveXコントロールなどのIEコンポーネントを使ったWebサイト、あるいはWebベースの業務アプリケーションが多いからだ。これが改善されることが、IEが大きなパイを占めるWebブラウザ市場に新風を吹き込むための必須条件ではないだろうか。
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