エネルギー効率に優れた「グリーンデータセンター」の作り方(1/2 ページ)

グリーンコンピューティングは、データセンター管理者の間でいま最もホットな話題だ。グリーンデータセンターでグリーンドライブを利用すれば、オペレーション効率を改善し、全体的なエネルギーコストの削減が可能になる。

» 2008年09月12日 06時45分 公開
[George Crump,eWEEK]
eWEEK

 データセンターのグリーン化は、本気で取り組めば、完成するまでに何年もかかるマラソンのような大仕事だ。最近EPAが発表したデータセンターに関する報告書によると、データセンターは米国の全エネルギーの1.5%を消費しているという。グリーン化はグローバルな問題でもある。エネルギー消費は2030年までにおよそ57%増加するとみられている。需要は常に供給を上回り、エネルギーコストは今後も上昇を続けるはずだ。省エネは、もはや単なる環境問題にとどまらず、重大な経済問題になりつつある。

 エネルギー効率を改善する取り組みとして、いま注目されるのは「グリーンドライブ」の利用である。グリーンドライブとは、ディスクをスピンダウンして、アイドル状態やスタンバイモードに切り替わるドライブのことである。それらのドライブはアイドル状態のときに電力消費を最少化する仕組みになっている。ドライブがスローダウンすれば、電力消費が減り、冷却要求も少なくなる。欠点は、エネルギーの効率化と引き換えに、アクセス要求へのレスポンスが低下することだ(データの読み書きとも)。

 さて、グリーン化計画のよりどころは、「80/20の法則」である。ほとんどの企業では、データの80%以上が非アクティブだ。それらは高速ディスクに格納する必要はない。一方、われわれの推計では、企業データの少なくとも5%は高速な半導体ディスクに格納すべきものだ。また、残りの15%は、消費電力の大きな通常のオペレーティングドライブにおく必要がある。もし85%のデータをグリーン環境に移行することができたら、企業は電力消費コストの劇的な削減が可能になる。

総合的アプローチの必要性

 そうしたことからストレージメーカー各社は、自社製品へのグリーンドライブ技術の導入に積極的だ。ただし問題は、システム全体を再設計しなければならないことである。そのためにメーカーは総合的なアプローチを取る必要があり、ストレージシステムの各コンポーネントをファインチューニングして、オペレーション効率の最大化を実現しなければならない。それができなければ、ストレージシステムはほかのコンポーネントとともに今後も膨大な量のエネルギーを消費し続けるだろう。

 IDCが2008年に発表したリポートによると、ドライブの稼働、冷却に必要なエネルギーは1台当たり48ワットだという。その内訳は、ハードドライブの駆動に12ワット、ストレージシェルフ(HBA、ファン、電源)の維持に12ワット。残りの24ワットは、ハードドライブとストレージシェルフの冷却に向けられる。シェルフ内の1台のドライブ(そういう構成はまれだが)は、トータルで48ワットの電力を消費する計算だ。そのなかには、プライマリストレージコントローラなどの駆動や冷却に要する電力コストは含まれていない。

 伝統的なストレージメーカーがシステムの電力消費をコントロールできる部分は少ない。なぜなら、アレイシェルフ内のドライブ群にデータをどのようにデータの読み書きするかについて、彼らはほとんど関与できないからだ。メーカー側では、すべてのドライブをフルパワー、フルスピードで稼働させることを前提とする以外にないのである。

なぜグリーンドライブはグリーンなのか

 グリーンドライブの電力消費が効率化するためには、スピンダウンするアイドル状態が時間的に十分な長さになることが不可欠だ。スピンダウンしたドライブがスピンアップするとき、大きなパワーを必要とするため、その分の電力消費(前述した12ワットのほぼ2倍)をオフセットできる十分なアイドルタイムのあることが条件となる。スピンダウンしたドライブがアクセスのたびにスピンアップすると、実際は通常より多くの電力を消費してしまうのだ。それを避けるためには、データのリクエストがあったとき、シェルフのすべてのドライブがスピンアップしなくてもすむようなアレイに再設計にする必要がある。

 例えば、12ベイのシェルフに並んだRAIDアレイがあり、そのシステムに格納されたWord文書にユーザーがアクセスするとしよう。何のインテリジェンスもないシステムであれば、その要求を処理するために、すべてのドライブがスピンアップし、フルスピードになる。ところが、そうした動きをコントロールするインテリジェンスをアレイパーティションにマニュアルで実装することは難しく、メインテナンスも極めて困難だ。その結果、あらゆるところにLUN(論理ユニット番号)が溢れることになる。

 こうした問題から、それぞれのブロックをどのディスクにどのように書き込むかといったコントロールを含む総合的なソリューションが必要になる。

 電力管理の第1歩は、ストレージシステムにデータをどのように読み書きするか理解させ、それをコントロールできる能力を組み込むことだ。そのような機能はブロックレベルで、あるいはファイルシステムを通して実現できる。ただこの場合、データをタイプ別、アクセスモデル別に判別できることが極めて重要になる。もし間違ったタイプのデータを電力管理されたドライブに書き込むと、ドライブがスピンダウンとスピンアップを短時間で繰り返すことになり、電力消費が逆に増加してしまう。そこに書き込まれるべきデータは、日常的には利用されず、変更されることもないデータではあるが、将来的には必要になる可能性があるといったタイプのものだ(そのため簡単に検索できることは重要)。実際、既存のアレイに電力管理されたドライブのシェルフをただ単に追加するだけでは、電力消費の効率化にほとんど寄与しない。

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