暗雲漂う国内IT投資の行方Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年09月16日 10時29分 公開
[松岡功ITmedia]
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今夏からIT投資意欲鈍は鈍化している?

 これまで2008年度の国内IT投資は、堅調に推移するとみられていた。IT専門調査会社のIDC Japanが6月中旬に発表した2008年の国内IT投資予測でも前年比2.6%増としていた。

 同社はその要因について、「米国の景気減速や原油高、円高、原材料の高騰などを受け、国内の経済も減速傾向にあるものの、コンプライアンスや内部統制対策を進めるうえで業務プロセスやユーザー部門の課題が明確になり、解決に向けてIT投資をする企業が増えつつある」からだと分析していた。

 加えて、2008年は堅調に推移するものの、2009年以降はハードウェアの低価格化や運用コストの見直しなどが進み、IT投資は鈍りそうだと予測している。

 しかし、内閣府の機械受注統計や日経パソコンの情報化実態調査をみると、企業のIT投資意欲は景気の後退感を受けて、すでに今夏あたりから鈍化している可能性がある。

 2008年度も半分が終わろうとしている今、ITベンダーはそうした傾向を踏まえたうえで、これまでにも増して顧客ニーズをとらえた提案を行っていく必要がありそうだ。

 大塚商会が2008年度の中間決算を発表した8月1日、大塚裕司社長は国内IT市場の今後の見通しについてこう語った。

 「原油高や原材料高、米国の景気後退による輸出の減少などで、国内景気の下振れリスクが高まっている。だが、ITを活用した経営改革のニーズは底堅いものがある。楽観視はできないものの、内部統制やセキュリティ強化、システム基盤の見直しなど、IT分野にはまだまだ追い風が吹いている」

 国内景気については、今秋に政治が大きく動きそうなこともあり、どのような状況になるか読みづらいところがある。ただ、大塚社長が言う通り、たとえ景気の後退感があるとしても、企業にとって必要なIT投資は避けて通れない。そこをどう説得できるか。ITベンダーの腕の見せどころだろう。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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