VMware CEO、クラウド進出とMicrosoftを語る

VMwareのマリッツCEOは、クラウドコンピューティングインフラを構築する構想を説明し、Microsoftを同社の優位に挑む主な挑戦者と考えていると語った。

» 2008年09月17日 14時34分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米VMwareの社長兼CEO、ポール・マリッツ氏は9月16日、VMworld開幕に当たって初めて公の場で自身の構想を具体的に話した。同氏の基調講演と開幕コメントは、仮想化が緒に就いたばかりのクラウドコンピューティングインフラをどのように強化するかや、VMwareが直面するMicrosoftからの挑戦など多岐にわたった。

 同氏は開幕基調講演で、VMwareの顧客およびサードパーティーのホスティング会社に向けたクラウドコンピューティングインフラを構築する構想を説明した。これには、新しい仮想化技術、管理機能、サービスをセットにした「Virtual Datacenter OS(VDC-OS)」が含まれる。

 マリッツ氏は、これらの技術がどのように動作するか、VMwareがこれらをどう市場に投入するかについて大まかに語ったが、VDC-OSが登場するのは少なくとも2009年以降になる。この目標に向けた最初の大きな一歩は、VMwareのVirtual Infurastructureスイートの抜本的な刷新になる。同スイートのアップデートも2009年の予定だ。

 データセンターOSというアイデアは、マリッツ氏とVMwareのエンジニアが、従来のMicrosoft WindowsやLinuxに取って代わろうとしていることを示しているようだ。だが同氏は基調講演後に、VDC-OSは幾つかの点で従来のOSに似たものになるが、それに取って代わることが目標ではないと語った。

 「VDC-OSが処理するアプリケーションロードは、現在のOSが処理するものとは根本的に異なる。VDC-OSはヒエラルキーの境界線を塗り替えようとしている」とマリッツ氏。「サービスを提供するという意味では多くの点でOSに似ているが、従来型のOSではない。人々は徐々にサービスを使って新種のアプリケーションロードを生み出すようになり、今現在OSとアプリケーションの組み合わせが果たしている役割を、こうした新種のアプリケーションロードが担うことになるとわれわれはみている」

 VDC-OS計画で、VMwareはデータセンターのあらゆる側面に手が届くよう、同社の仮想化プラットフォームのリーチを拡大しようとしている。仮想化は従来、x86サーバの内部で使われてきたが、VMwareのクラウドインフラ構築計画では、基本的なVMwareのソフトと管理ツールがデータセンターのストレージやネットワーキングに統合されると同時に、新たなアプリケーションやセキュリティ機能の構築にも対処する。

 Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は、VDC-OSとクラウドコンピューティング参入で、VMwareはデータセンター内にさらに大きな抽象化レイヤーを作ることができると語る。

 「古いスタイルの仮想化では、『土台になるハードの種類は問題になるのか?』という点が疑問だった。答えはノーだ」とキング氏。「VDC-OSでは、OSやプラットフォームの種類は問題ではなくなる。基本的に土台となるものすべてを透明化する」

 VMwareは自社のインフラプラットフォームの機能を高めて、企業内クラウド、またサードパーティーによるクラウドを構築する上での問題に対処しようとしているが、同社はほかの主要ベンダーとの提携も強化している。

 マイクロプロセッサの分野では、Intelと協力して「Flex Migration」という技術を開発した。Intelは同技術を9月15日に発表したXeon 7400シリーズとともに提供開始した。これによりVMwareのVMotionが、異なるIntelチップセットを使っているサーバ間で仮想マシンをよりスムーズに移動できるようになる。この技術は、「Nehalem」アーキテクチャを基盤とする次期プロセッサも含め、新しいIntel製プロセッサおよびチップセットと連係する。

 またAMDともOpteronプロセッサ向けの同様の技術で協力している。ただしVMwareは今回、IntelプラットフォームからAMDプラットフォームに仮想マシンを移動する方法は開発していない。

 これらのピースをすべて組み立てて、個々の企業向けのGoogleライクなデータセンターとしてVMwareが期待している製品を提供するのにはある程度の時間がかかるだろう。またマリッツ氏は、これは今後12〜24カ月で発展すると確信していると語った。VMwareはまた、サードパーティーに、自社製品を各企業のデータセンターと連係させる機能を提供する必要がある。

 一方でVMwareは、Microsoft、Citrix Systems、多数の小規模仮想化企業による挑戦をかわそうとしている。マリッツ氏が、先に解雇された前CEOで共同創設者のダイアン・グリーン氏からVMwareを引き継ぐ間にも、同社は変化している。

 VMwareがIT業界で強力な存在であるのは、同社が1998年に設立されたときに、x86仮想化に取り組んでいる企業がほかになかったからだ。現在この分野はシフトしており、マリッツ氏は、Microsoftを同社の優位に挑む主な挑戦者と考えていると語り、仮想化技術においてはMicrosoftはまだ遅れていると確信していると付け加えた。

 「Microsoftを考慮から外すことはできない。今の栄誉に満足するわけにはいかない」(マリッツ氏)

 同氏は基調講演後の談話で、VMwareがプロプライエタリなハイパーバイザーに関してオープンソースコミュニティーで抱えている対立についても語った。同氏は、オープンソースコミュニティーの取り組みには感服していると話し、Xenなどのオープンソースハイパーバイザーをサポートすべきかどうかについて、VMware内で以前から議論があると語った。

 結局、VMwareはオープンソースプロジェクトに時間とリソースを投じる前に、同社の製品に対して生じている課題に対処する必要があると同氏は述べた。

 「われわれの独自プラットフォームを中心に取り組みをまとめる必要があるが、そればかりをかたくなに信じ込んでいるわけではない 」(同氏)

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