勘や経験による価格設定をしてきたアパレルや家電量販店では、商品の在庫を抱え、ライバル企業との価格競争を強いられている。SASは、商品を展開する場面ごとに最適な価格を設定できる製品を発売した。
SAS Institute Japan(SAS)は9月18日、販売や在庫の一掃といった商品のライフサイクルにおいて、適正な商品価格を設定できる製品「SAS Revenue Optimization Suite」を発売した。
このスイート製品は、商品の市場投入やプロモーション、在庫一掃といった場面に合わせて、利益を生み出すように商品の価格を設定できるもの。多店舗経営を行う小売業などでは、商品の特性や地域性を考慮せずに、従来の勘や経験を頼りに商品の価格を設定してきた。競合商品との差別化要因が値下げに偏り、利益が生まれにくくなる面があった。
同製品は、前のモデルなどの特性や販売の傾向を把握し、価格を決める。売れ行きの悪い商品は、同じカテゴリーの商品特性からさまざまなデータの近似値を取り、適正価格を計算できる。在庫の補充が必須となる日用雑貨などの“長期ライフサイクル商品”と、アパレルのように仕入れた商品をすぐに売るという“短期ライフサイクル商品”が混在した状態でも、適正価格を決められるのが強みだ。
例えば靴の適正価格を決める場合、まずは「春夏物」「秋冬物」「オールシーズン」というように「通年」と「季節」の観点で商品の特性を分ける。次に「メンズ」「レディース」や「ドレス」「カジュアル」など商品のカテゴリーごとに分類をする。最終的にその製品がどの店舗に並ぶかといった地域性を考慮して、適正価格を決める仕組みだ。
同製品は3つのモジュールから構成される。商品を市場に投入する際に、過去の販売実績や地域性で価格を決める「Regular Price Optimization」、売れ行きが鈍化したときに、いつどのようなプロモーションを展開するかといった計画を策定する「Promotion Optimization」、在庫を処理するための値下げプランを算定できる「Markdown Optimization」だ。
同社の宮田靖執行役員は「小売業はITを経営に生かしきれていない」と指摘する。電子商取引などWebサイト経由の販売が広がり、価格の比較が容易にできる現在、メーカーや消費者は「店舗と同等の知識を持つようになった」(同氏)。そのため店舗側であいまいな価格設定をしてしまうと、顧客を獲得できなくなる。新製品を「データの活用を経営に直結させる製品」と位置付け、ドラッグストアやスーパーマーケットなどにも売り込みを図っていく。
価格は最小構成で1モジュール当たり3000万円程度になる見込み。年商1000億円規模の企業に製品を売り込み、来年度までに顧客企業7社の獲得を目指す。
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