EDIで受注データを取り込んでも、後続する生産管理システムや経理システムと連動させて運用している例は少なく、いったん紙媒体に出力し、これを後続システムに入力し直しているといったケースが多い。中小企業内の各システムは独立して導入されることが多く、内部で相互にデータ交換を行うことは少なく、システムとシステムの間はバッチ処理で人間が介入しているのが現状である。
EDIは役に立っているのかというと、これが微妙である。
見てきたように『IT新改革戦略』にある「広く合意された規約に基づき」EDIが作られていないので、汎用性がない。得意先の数だけEDIシステムを用意し、各社の受注を合成して社内の生産計画を作ることになる。
また、「受発注や決済などの取引に関する情報」というのは実はあまり役に立たない。
中小企業は受注後に材料手配、部品手配、場合によってはパートなどの人材確保をしていたのでは、要求納期にとても間に合わない。そこで、得意先からの内示情報を参考にするが、これでも間に合わないことが多いので、フォーキャストと呼ばれる得意先の生産予定を頼りにして、自社の生産計画を立てるのである。これが精度よくEDIによって伝達されればそれなりに使えるのであるが、内示や生産予定は確定ではないので、どの程度信頼するかを悩むことになる。
また、製作に図面が必要な場合は、EDIを介さず手渡し、あるいは別ラインによるCADデータで転送することになる。
中小企業は部品調達や外注作業で、多くの中小企業と連携するが、中小企業間の取引でEDIが活用されることはほとんどない。電話、FAX、口頭といった取引形態が主流である。
これは中小企業間のEDIを推進する専門家や組織が少ないこと、ITを使いこなすのが上手でない人でも使えるような、安価なシステムを提供できていないといった、スキームの問題を解決できていないといったことが要因と言えるだろう。
このように中小企業でのEDIの活用はいまだ発展途上であると言えるだろう。専門家やベンダーの手厚い支援が期待されるところである。
さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。
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