コラム
» 2008年10月14日 03時00分 公開

高専プロコンリポート:高専プロコンを襲った魔物の正体とは (2/2)

[西尾泰三,ITmedia]
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まさかの中断、会場を包む重い空気

悲痛な表情で競技部門の中断を宣言する松野氏。さぞ無念だったと思われる

 競技部門ではシステムのエラーらしき部分で競技が正確に進行していないのではないかという予兆が初日から見て取れた。それが2日目になって、CSVデータの受け渡しの部分に一部問題が生じているようで正常に進行できないため、競技の継続は困難と判断したと発表が行われた。前代未聞の幕切れである。

 競技の中止が発表された後、運営側の計らいで、エキシビジョンという位置づけながら競技は行われた。競技ではなくエキシビジョン――そこにはすでに熱気はなく、ほかのチームの妨害を目的したかのような動きをするチーム、「オワタ\(^o^)/」などの文字をディスプレイに映し、それをこちらに向けて笑いをさそうチームなど、しらけた感じが漂ってしまっていた。今回から地元の方も自由に観戦できるようオープンなものとしていたこともあり、来場していた多くの一般客は何が起こっているのか分からずにいた。

運営側の覚悟も必要

 昨年の津山大会では、津山高専さらには地元の方まで巻き込む優れた運営も高く評価されていた。文字通り一丸となって高専プロコンを応援していた。中でも、競技部門のシステムをほとんど1人で支えていた井上恭輔氏の能力の高さを記者はあらためて感じた。数百人規模の人物が目にするシステムを、止めることなく動かし続けるというプレッシャーは相当なものであるはずだからだ。

 そんな井上氏はすでに高専を卒業し東京で働く社会人だが、何とこの日の会場に来ていた。「(ここに来る交通費は)自腹ですよ」――そういって笑う井上氏は高専生のころと変わらない印象を受けるが、今回のトラブルについて訪ねると少し顔を曇らせた後、渋い表情でこういった。

井上恭輔 井上恭輔氏(写真は昨年の津山大会のもの)

 「(昨年の津山大会では)システムにバグを残さないようにそれこそ死にものぐるいで構築していきました。これだけの規模の大会のシステムがダウンする、そのことがもたらす影響を考えれば、開発者は決して止めてはならないし、運営者は決して止まらせてはならない。今回が最後の大会となった学生も多数いることでしょう。そうしたことを思うと悲しいですね」(井上氏)

 ロボコン、プロコン、デザコン(デザインコンペティション)といえば、高専生が多く参加する3大イベントだが、そんなイベントを過去18回開催してきたという“慣れ”が油断につながったのかもしれない。あるいは、7月に設立されたNPO法人「高専プロコン交流育成協会」にみられるよう、国際化などを視野に入れた拡大路線を取る中で足元をおろそかにしていたといわれても反論はできないのではないか。

 本戦開始までに数度、追加情報という形で仕様が変更されていたことから、システム開発も難航したであろうことは外部からでも容易に想像できる。タイトな期間、切り詰められた予算、それらいずれもバグを誘発させるに十分な理由として挙げられる。しかし、過去の大会と比べて今回が特に厳しい条件であったわけではない。仮に厳しい状況になっていたのだとすれば、それは運営側の問題である。

 少なくとも、ほとんどボランティアに近い状態で参加していた開発陣を責めるのは筋違いだろう。今回の大会では、上述した井上恭輔氏に勝るとも劣らない方々を開発に迎えた。彼らは高専OBとして自らのプライベートな時間を削りながらシステム開発に携わってきた。結果として競技が中止したとはいえ、彼らが全力でそれに取り組んだことは事実である。あるとすれば物理的に離れた場所での分散開発が中心になっていたことによる何らかの油断だろう。

競技部門に参加した津山高専チーム。再試合の日を心待ちに

 いずれにせよ、運営側にはこれだけのイベントを開催するにあたっての覚悟が欠けている部分があったのではないだろうか。この問題の発生に至る過程で、それを防止する策は取られてきたかを振り返り、そうした失敗を今後の糧にすることが必要だ。

 来年は千葉の木更津市で第20回という節目を迎える高専プロコン。その意味で運営委員会に掛かる期待は大きい。なお、今回の競技部門にかんしては再試合を予定しており、10月中に何らかの発表が出される。

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