人間サプライチェーンで「シフト表作成地獄」から解放茨城県つくば市のホテル(1/2 ページ)

「人間サプライチェーン」をコンセプトに勤務シフト表を作成するソフトウェアを構築したのはソフトウェア開発ベンチャーのウィンワークス。茨城県のホテルはこの仕組みを導入し、シフト表作成にまつわるさまざまな課題を解決した。

» 2008年10月17日 08時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「以前はシフト表作成がとにかく大変だった」

WINWORKS Oneを使った勤務シフト表の画面

 こう話すのは、茨城県つくば市のホテル、オークラフロンティアホテルつくばの総務部次長を務める御代田英至氏だ。ホテル内に3つあるレストランを運営するため、これまで各店長などのマネジャーは正社員やアルバイトの勤務シフト表作成業務に追われていた。満席を想定して従業員を配置するものの実際には客足が伸びないといった日も多く、無駄な人件費が掛かっていることも問題だった。

 そこで、客足の過去の実績などを考慮した上で、最少人数の勤務表を作成するソフトウェアを使うことにした。導入したのはウィンワークスが提供する「WINWORKS One」だ。ウィンワークスの渡辺邦昭社長は、以前製造業向けサプライチェーンマネジメントのソフトウェアを販売していた経験から、「必ずシフト表作成に転用できる」と確信した。フランスのIlog製エンジンを核にソフトウェア製品として開発したという。

 オークラフロンティアホテルにおけるシフト表作成システム導入の成否を調べた。

人件費削減に効果

 7月にレストラン「カメリア」で新システムが稼働した。最大の狙いは、レストランで働く従業員に支払う人件費の削減だ。従来、シフト表を作成するマネジャーは、Excelシート上で鉛筆を舐めるイメージでシフト表を作成していた。ホテル近くのイベントホールで時々開催されるコンサートなどにより、予想を上回る数の客が来店することがあるため、マネジャーは常に満席を想定してシフト表を書いていた。実際には人手が足りなくなるような日は月に3日程度。残りは労働力が過剰になり、必要以上の人数で店舗を運営するため、人件費の負担が大きくなっていたという。

 WINWORKS One導入により「従来は5人張り付けていた持ち場を3、4人にできるようになった」(御代田氏)。過去の客足、宿泊や宴会の予約数をベースに表を作成するため、現場からも精度に信頼がある。マネジャー権限やアルバイト権限など、役職やスキルも勘案できる。固定スタッフを極力減らし、スタッフが不足する時間帯のみシフトを自動的に割り付ける「常備アルバイト」、どうしてもスタッフが不足した際に管理者を含めた社内の人員を割り当てる「社内応援」という2つの枠をシフト上に設けた。結果として、スリム化した勤務体制を確立し、従業員1人の1時間当たりの接客数が平均14%向上した。

精神的な苦痛からの解放

 システムの導入効果は人件費の削減という形で数字で現れたが、御代田氏によると定性的な効果も大きかったようだ。

 1つは、マネジャーがシフト表作成の苦痛から解放されたことが挙げられる。従来、各店舗のマネジャーは月次のシフト表作成に1日2時間、1週間を通じて取り組んでいた。休暇願など従業員の個別の要望も取り入れながらの作業は「ストレスのかかる仕事だ」(御代田氏)。

 ソフトウェアがシフト表を作成することで、こうした手間が丸ごとなくなった。パソコンの画面でボタンを一回押せば「ほとんど瞬時に表が作成される」。人手が足りないときに、休みを取っている従業員に臨時の出勤を依頼するような場合も、従来はマネジャーが気を使いながら直に話をしていた。新システムでは、ソフトウェアが機械的に表を吐き出すため「マネジャーの精神的負担が軽くなった」という。

 「遠慮なくヘルプに来てもらえるようになった」(御代田氏)

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