ITとの距離感──「コンピュータのこと、俺は分からん!」伴大作の「木漏れ日」(2/3 ページ)

» 2008年10月20日 09時00分 公開
[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]

データ共有化の実態

 次に、彼らが取って返して、あなたに、このような実情を報告しにきた場合、どのように対処したらいいか。このような状況はどの会社でも似たり寄ったりで、いわば一般的と言ってもいい状況だから、答えをあらかじめ準備しておいた方がいいだろう。

 報告内容が上記とそれ程変わらない場合、ちょっと深刻そうな顔をして、コンピュータに関する部署の関係者を集める会議召集を命じるのが効果的だ。

 召集命令を出すにあたって、一言確認を行うともっと効果が上がる。それは、製品や部品のコード表も持参するようにと言葉を添えればなおいい。賢明なIT部員なら、新社長の意図を即座に判断するはずだ。彼が取り掛かろうとしているのが、全社的なシステム統合だということを察するだろう。同時に、その試みが非常に困難であることも知っているはずだ。

 全社に散らばったシステムの担当者を集めても、議論百出。それぞれが自ら利用しているシステムの特異性を主張するのは目に見えている。たぶん、結論はすぐに出ないだろう。

 だが、その会議ではどのような業務がどのようなシステムで動いているか、どの程度の費用を要しているか、稼働率はどの程度なのかを知ることができる。どの部門とどの部署が緊密な連携を取っているか、それとも、本来は情報を共有化してなければならないはずの部署なのにそれが全くできていないことに気付くかもしれない。

 また、同じ部品を違った名称で呼んでいたり、コードが違っていることは確認できるだろう。それができれば、大きな成果を挙げたと自慢していい。それで十分なのだ。

統合はトップダウン、しかし慎重に

 さまざまなシステムがあっても無理を承知で急いで統合することはない。大事なのは社長の直接の管理下にすべてのシステムを置くことだ。

 各部署で、全く異なったシステムを導入している現実を把握できれば、次のステップは彼らを御することだ。自分の知らないところで、システムの追加導入、更新を防止することが重要だ。それがマネジメントだ。統制された投資を行う、これは新製品開発、工場建設で当たり前になっているプロセスをITにも適用するだけなのだ。

 もう1つ重要なことはコード体系だ。コード体系の統一は今後システム統合を進める上で最も重要なプロセスだ。最初は全社でバラバラになっているコード統合を図ることに集中するべきだ。このコード統合はもちろんISO、JISをベースに作らなければならないが、場合によっては同業他社や下請け、販売先を巻き込まないとできない可能性が高い。

 つまり、コード統合はあなたの会社が業界をリードすることにつながる。IT統合より、その方がはるかに効果が高いはずだ。しかも、業界におけるあなたの会社のプレゼンスは格段に高まるはずだ。これでシステム統合への最初の関門は突破したことになる。同時にIT部門はあなたの長期的展望に対し、心底尊敬の念を持つはずだ。IT部門を貴方の意のままにする、最初のステップはこれで終らせていい。これでしばらくは、この問題に頭を悩ますことはない。

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