第1回 間違ったBIはどこへ行く“「考える組織」への変革”を促すビジネスインテリジェンス(2/2 ページ)

» 2008年10月21日 07時00分 公開
[米野宏明(マイクロソフト),ITmedia]
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BIの利用目的の大分類

BIの目的 企業内でBIを利用する目的

 企業でのBI利用目的は、少々乱暴だが、上の3つに分類することができると考えている。意思決定はあくまで個々人のものだが、意思決定の過程で生み出した知恵(インテリジェンス)を組織全体で共有できれば、組織全体の意思決定力水準も向上する。またその個人の知恵を吸い上げ組織戦略に反映させることで、より適切な戦略立案と実行が可能になる。今回はまず、企業BIの最終ゴールともいえる「1.企業戦略の最適化」から説明していこう。

企業(事業)戦略最適化のためのBI

 近年「企業パフォーマンスマネジメント」分野の拡大が顕著だ。ベンダーによってメッセージに違いはあるが、大まかには、予算など戦略データの効率的な収集と編成をサポートする「プランニング機能」、業績をリアルタイムに監視する「モニタリング機能」、問題の原因を分析し改善のために共有する「分析機能」および「レポーティング機能」を装備したものを、「パフォーマンスマネジメントスイート」と呼ぶ。一連の買収劇により、主要なベンダーはマイクロソフト、オラクル、SAP、IBMの4社となった。このソリューションは前述の?〜?を包括的にカバーしようとするが、特にプランニング機能は、戦略最適化の出発点となる「現場見通しの吸い上げ」に効果を発揮する。

 企業内には多様なプランニングが存在するが、中でも売上や経費予算などの「予算編成」が最もなじみ深いだろう。期初に年度目標としての予算を決定、従業員はそれを達成すべく日々活動する。この期初の編成には非常に労力がかかるのだが、しょせんは年に1度の話だ。深刻な問題は、実はその後の「予算の見直し」作業にある。経営環境の変化はますますスピードアップしており、期初の戦略も3カ月後には役に立たなくなる。従って、目標や資源配分を反映する予算もまた、変化に合わせた調整が必要だ。現に、企業における財務予測サイクルは1年から四半期、さらに月へと短くなってきている。それを実現するには、素早くビジネスの見通しを立てなければならない。

 そして、正しい見通しは現場にこそある。ある顧客が向こう1年間にどの製品をいくら購入しそうなのかは、担当営業が一番よく知っている。経営者も過去の実績に基づいた将来の傾向予測はできるが、それは過去と将来が連続である場合に限られ、各顧客の特殊事情は組み込めない。担当営業なら、統計データには表れない顧客や業界固有の動向までも、比較的高い精度と低いコストで、予測に反映させることができる。

 皆さんも「予算実績(予実)対比」という言葉をよく使うだろう。役に立つ予実対対比とは、実績と「見通し調整後の」予算の比較である。多くの「経営の見える化」システムが犯す過ちなのだが、期初の固定予算と比較するだけでは、どんなに美しい画面でも意味がない。ビジネス環境は常に非連続で変化するため、知るべきは過去ではなく、将来の動向すなわち「最新の見通し」であり、鮮度がすべてに勝る。つまり、いかに現場に負荷をかけずに最新の見通しデータを収集するかが最大のポイントとなる。新しい管理手法のために既存の業務とは独立してデータ収集を行うと必ずと言っていいほど失敗するため、既存の業務プロセスの中にこの仕組みを埋め込む必要がある。

 パフォーマンスマネジメント データを中心とした企業のパフォーマンスマネジメントこそが組織を適切にコントロールする

 現在普及しているスイートの多くは、既存業務プロセスとの連携を強く意識し、Excelを入出力インタフェースに使いつつ、データを多次元集計データベースに格納する方式を採用している。ユーザーがExcelシート上の表に予算データを入力すると、それがサーバ上の多次元データベースに直接格納され、自動集計されて、その結果がExcelに返される。書き込み可能なピボットテーブルのようなものだ。この機能により、今まで人と人との間でExcelファイルとしてデータを受け渡していた予算編成や見通し収集作業が、サーバを中心とした人とシステム間の通信に置き換えられる。これにより、集計や編成の手間が省けるだけでなく、マクロや関数、データやプロセスの統制が可能となり、さらに常にデータベースが最新の状態に保たれるようになる。

Excelを利用 Excelをインタフェースとして、サーバ上のデータを直接更新し、結果を得る

 このようにして集められた最新の見通しデータと、業務システムの最新の実績データを対比することで、「最新の予実対比」ができ、経営者や管理者による戦略的意志決定はよりタイムリーになる。現状と見通しを適切に反映した新たな目標および戦略情報は、組織をより適切にコントロールしてくれる。

 今一歩実現イメージがわかないという方は、10月31日にマイクロソフトの新宿本社で、スイート製品を使った無償セミナーを実施するので、ぜひご覧いただきたい。新たなBIの可能性をご理解いただけると思う。

 次回以降では、残る2つの利用目的とそれぞれに最適なテクノロジー、BIを核とした情報バリューチェーン構築方法について解説していきたい。

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