「電力削減」を掲げつつもなかなか実行に移せない企業は多い。IBMは自社のソフトウェアを使って、会社のどこで電力を浪費しているかを具体的に把握している。数値ベースでの電力消費をつかむことが、グリーンITで明確な効果を出すはじめの一歩になるかもしれない。
米IBMがネバダ州のラスベガスで開催している「IBM Information on Demand 2008」。米国時間の10月27日には「Infomation and the Future of Energy」と冠したセッションが開かれた。環境にやさしい製品やサービス群を取り入れた企業活動が注目を集め、グリーンITという言葉も生まれた。そんな中、IBMはソフトウェアを軸に電力の削減に取り組み始めている。
IBMが力を入れるのは、在宅勤務の奨励だ。同社でTivoli Software部門を担当するクリス・オコナー氏によると、42%の社員が「オフィスを持たずに仕事をしている」。仕事に必要な情報の共有や所在の確認は、専用のソフトウェアを使うことで、仕事をオンライン上で共有する仕組みも作った。出張の数も減らしたことで、全社員が会社で仕事をする場合に比べて、金額にして「970億ドルのコスト削減効果につながった」(オコナー氏)。
社内の情報管理において、特に注意を払っているのはデータの重複だという。電子メールにファイルを添付したり、複数の社員が1つのストレージに同じデータを重複保存したりするなど、企業ではデータの重複が起こりやすい。そのたびに装置のHDDが駆動してしまい、多くの電力を消費する。IBMではこうした無駄を避けるために、社員にファイルの重複保存をしないように呼びかけ、重複データの削除やデータの圧縮を進めたという。
こうした取り組みを支えるのが運用管理のソフトウェアだ。同イベントでは新たに運用管理製品「Tivoli Usage and Accounting Manager」や消費エネルギーを測定するツール「Energy and Environment Self-Assesment Tool」などを発表した。「こうしたツールを社内で使って、エネルギーの削減量を数値化している」(日本IBM広報)という。
IBMは、電力量を具体的に把握できるソフトウェアを使うことを推奨している。電力削減を掲げるも、実際の効果を可視化しにくいため、本格的な取り組みにはつなげられない企業が多いと見ているからだ。
オコナー氏によると、IBMでは在席状態をソフトウェアで管理し、席を離れた人間のPCがログインしている状態だった場合は、電源を自動的にセーブする仕組みを取り入れているという。どこで浪費があるかを的確に把握することで、電力消費の削減を推し進めることができる。
「1つの会社内でも情報の保存や活用の仕方は違う。国をまたげばなおさらだ。企業のどこでどういったエネルギーが使われているかを把握できるソフトウェアの活用を考えてみてはどうか」(オコナー氏)
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