“データ”の“ベース”を見据えるIBM(1/3 ページ)

IBMソフトウェア部門のスティーブ・ミルズ上級副社長は、IBMのインフォメーション・オンデマンド戦略、クラウドコンピューティング、SaaS、データを保存場所に置いたままでのデータ分析などについて語った。

» 2008年11月04日 07時00分 公開
[Brian Prince,eWEEK]
eWEEK

 Cognosの買収や多数の製品リリースなど、この1年間は米IBMにとって忙しい日々が続いた。IBMのコックピットに座るスティーブ・ミルズ氏は、同社の「インフォメーション・オンデマンド」(IOD)戦略を策定、拡大する取り組みで重要な役割を果たしてきた。IODはデータ管理/分析と個別業界向けアプリケーション/サービスを組み合わせた戦略であり、企業がデータをより効果的に活用するのを支援するのが狙いだ。2008年も終わりに近づいた今、IBMソフトウェア部門のミルズ上級副社長はeWEEKのインタビューに応じ、IOD、クラウドコンピューティング、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)などについて語った。

―― IBMはアプリケーション事業に携わっていないのが問題だという指摘があります。このことは、IBMのさまざまな取り組みおよびIODの要件にとって不安要因となりませんか。

ミルズ それは常に不安要因であったというのが本当のところです。しかし、われわれの基本姿勢はエコシステムを構築することであり、パートナーと競争することではありません。

 ご存じのように、Oracleは広範なデータベースとミドルウェア製品群を持っており、これらはわれわれと直接競合します。また、Oracleは広範なアプリケーション資産も保有しています。同社がさまざまな企業の買収を通じて獲得したこれらのアプリケーション資産は、CRMやERP、そして個別業界向けの機能にフォーカスしたものです。これらはわれわれと競合する分野ではありません。実際、われわれはOracleやSAP、そして何千社ものアプリケーションベンダーと適切なパートナー関係を結んでいます。

 IBMとパートナーになりたいと考える企業のエコシステムを拡大する上でプラスとなるのが、われわれがミドルウェア技術にフォーカスし、圧倒的多数のアプリケーションベンダーがカバーしているコアアプリケーション分野に進出しなかったという事実です。

―― IBMはIODを社内でどのように利用するのですか。

ミルズ IBMは社内で多くのデータを連携しています。つまり複数のデータソース、そして、それを保存しているさまざまな種類のデータストアがあるのです。われわれはこれらのデータにアクセスし、それを統合し、そして分析しています。

 社内で使われる多くのレポートや分析では、情報の抽出元であるデータストアという意味では複数のソースを利用します。これらのソースから抽出したデータは、単純なスプレッドシートから複雑な分析に至るまで、さまざまなタイプの分析において集約されます。われわれは、顧客に話しているのと同じようなことをしているのです。つまり、データは保存場所に置いたままにしておき、利用という観点から目的に応じてデータを抽出・集約するということです。

―― IBMの「Information Agenda」というコンセプト、すなわち情報をベースとする企業を目指した道程において、標準的な企業はどのあたりにいるのでしょうか。

ミルズ ほとんどの企業はまだ初期段階にあると思いますが、彼らが連携技術に投資していないとか、彼らが現在、データを移動、統合しようとしていないというわけではありません。すべての企業が何らかの取り組みを進めています。

 大企業では、この取り組みを開始していないところはないでしょう。しかし、まだまだ初期の段階です。この10年間での彼らの取り組みのほとんどは、本格的な連携アーキテクチャを構築するよりも、既存のシステム同士を結ぶインタフェースを作成することだけに主眼を置いたものです。

 SOA(サービス指向アーキテクチャ)モデルを利用したプロセス連携の流れが2004年に本格化したのに伴い、2004年以降にはプロセス連携の一環としてのデータ連携に対する関心が大きく盛り上がってきました。統合型オーダー・ツー・キャッシュモデルを実現する中で水平的プロセス統合のメリットを認識した顧客は、ビジネスプロセスサイドでの取り組みを開始するや否や、共通のデータアーキテクチャおよびデータ連携について考え始める必要があることに気付きます。そしてこの状況は、この4年間ほどにわたり、われわれの情報連携ビジネスにとって追い風となってきました。

 しかし、これらの企業の道のりはまだ長いといえます。多くの混乱や重複が残されているのが現状です。彼らは現在も、自社のビジネスのための共通のデータモデルの作成に取り組んでいます。これは長い道程だということです。この先20年間ほどにわたって、この分野におけるわれわれのビジネスチャンスが拡大するだろう、というのがわたしの見方です。データの連携、データの整合性、共通のデータモデル、効果的なデータマッピング、データ分析などで、ある程度満足できるレベルを達成するまでには、多くの作業が残されています。この作業には20年くらいの期間が必要です。少なくとも30年間にわたる混乱が続いてきたのです。30年間の混乱を2〜3年で片づけることはできません。

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