仮想化時代に求められる運用管理の手法とはHITACHI Open Middleware World 2008 Autumn Report

11月17日、日立製作所の最新ITソリューションを紹介する「Open Middleware World 2008 Autumn」が開幕した。同社の運用管理ソフトウェアである「JP1」およびアプリケーションプラットフォーム「Cosminexus」の最新機能を中心に、事例や展示を織り交ぜた総合的なソリューション紹介が行われている。

» 2008年11月18日 07時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 11月17日、東京・港区の六本木アカデミーヒルズ40で、日立製作所による「Open Middleware World 2008 Autumn」が開幕した。同社による最新のソリューションや事例をユーザーに向けて発信するイベントで、18日までの全2日間の日程で開催される。開催初日となる17日は、「JP1 Day」として、同社の運用管理アプリケーションであるJP1を前面に据え、「仮想化&グリーンIT」を実践するというテーマで各テクニカルセッションが行われた。なお18日は、同社のSOAプラットフォームである「Cosminexus」をフィーチャーした内容が予定されている。

期待の仮想化、しかし新たな課題も露見

 金融不安に代表される昨今の世界的経済の先行き不透明感によって、企業は新規投資の凍結やさらなる経費削減に迫られている。ITシステムもその例外ではない。一方、無駄を省きながら環境変化に柔軟に対応し、効率的な業務遂行を助けるという責務もITシステムは負わなければならない。こうした背景によって、ITシステム管理の負荷はますます増加しつつある。日立製作所 ソフトウェア事業部 事業部長の中村孝男氏は、企業のITシステム管理の現状をこのように指摘する。

中村孝男氏 日立製作所 ソフトウェア事業部 事業部長 中村孝男氏

 多様なプラットフォーム上で複雑なシステムが稼働している現在のITシステム。高い運用負荷の要因ともなっているこうした状況に一石を投じる仕組みが、サーバ統合などでITリソースの効率化と柔軟な配分を行う仮想化技術であると中村氏。

 同じく同社ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 本部長の石井武夫氏も、仮想化が今後のITの重要な潮流であると訴える。石井氏は、国内の仮想化市場は2007年から普及が加速されており、2011年までに仮想化ソフトウェアの市場売上額が311億円にも達する見込み(IDC調べ)であるとして、その期待ぶりを示す。

石井武夫氏 日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 本部長 石井武夫氏

 仮想化の導入メリットはいうまでもないが、サーバリソースの有効活用によるハードウェアや運用保守のコスト削減、設置スペースや消費電力の低減などがあげられる。こうした効果をあげている事例も多いが、しかしながら、仮想化による別の複雑性が生まれていることもまた事実である。ある障害が発生したときに、それが物理サーバで起こっているのか、あるいは仮想サーバ上なのかを切り分けたり、障害の影響範囲を特定したりといったことが困難になってくる。もちろん、各マシンの性能管理も重要になる。また仮想化されていない環境と組み合わせる場合などでは、従来よりもさらに高い管理性を求められる。こうした課題を通して、仮想化の加速とともにシステム運用管理に対する新たな要望も高まりつつある。つまり、仮想化ソフトウェアと運用管理ソフトウェアの連携が、今後は重要になってくるであろうと石井氏は述べる。

仮想化環境を踏まえた管理機能の追加

 JP1の最新版となるV8.5では、上記の課題を踏まえ、仮想化の特性を考慮した運用管理に必要な機能が用意されている。

 障害対策は、仮想環境の統合監視を実施。複雑な仮想環境でも、障害の発生箇所の特定および障害影響の範囲を「目的別監視ビュー」により常に最新の状態で把握、迅速に確認が可能になっている。

ヴイエムウェア テクノロジーアライアンス部長 森田徹治氏がVMwareとJP1の連携を紹介

 また性能面における管理としては、稼働状況の把握と適切なチューニング支援があげられる。最新のV8.5で追加となる「JP1/PFM-Agent for Virtual Machine」によって、物理サーバと同様、仮想マシンも含めて稼働状況を把握、一元管理することで最適なリソース配分、チューニングが行える。

 仮想環境におけるバックアップも課題の1つである。仮想マシンでのバックアップ処理は、ほかの仮想マシンへのパフォーマンスに悪影響を与えてしまう。そこで、JP1では物理環境のストレージ上にある仮想マシンの全体イメージをバックアップすることで、仮想マシンにI/O負荷をかけない手法を実現している。今回はVMwareと組み合わせ、VMware Consolidated Backup(VCB)と連携することで、全体バックアップとリストアの効率的なバックアップ運用が紹介された。なお、前述の「JP1/PFM-Agent for Virtual Machine」も、両社の技術協業による成果であるという。

JP1のグリーンIT対応は

 JP1のグリーンIT対応は、データセンターやサーバだけでなく、オフィスのクライアントPCでも省電力視点での運用を目指している。データセンターおよびサーバについてはJP1/Power MonitorとJP1/AJSによって、業務の開始と終了に合わせたサーバの電源制御を実現。複数のサーバがそれぞれ異なる時刻で運用されていても対応できるという。クライアントPCにおいては、省電力対応PCの導入計画立案をサポート。省電力ポリシーの適用や電源管理、レポートによる省電力状況の評価などが行え、PDCAサイクルによるPCの省電力運用を継続的に改善することができるという。

 石井氏は今後の取り組みとして、次のメジャーバージョンアップの時期を明言した。次期JP1は2009年上期のリリースが予定されているという。どのような進化を遂げるのか、引き続き注目したい。

展示会場でも、仮想化環境の運用管理手法には多くの人々が興味を示していた

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