クラウドの儲け方キッコーマンが新たなプロモーション(1/2 ページ)

クラウドコンピューティングの仕組みを利用すれば、自社の強みとなる技術を世界に販売できるようになる。情報システムの合理化だけでなく、ビジネスそのものをクラウドが変える可能性がある。

» 2008年12月11日 11時17分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 インターネットを介してソフトウェアを提供するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)やASPに注目が集まる。最近になり、インフラも含めクラウドコンピューティングと呼ばれることも増えてきた。クラウドコンピューティングの登場は、情報システムだけでなく既存のビジネスにも変化を与えるという。企業は、複雑なシステムを自社で開発せずにクラウドを活用して新サービスを始められる。あるいは、自社が持つ技術をクラウドの仕組みに載せて販売することも可能だ。実際に、食品大手のキッコーマンは12月11日、凸版印刷のASPサービスを基盤にして、新たなフォトコンテストを実施すると発表した。「クラウド時代の儲け方」について考えてみたい。

キッコーマンが開始するフォトコンテスト

 キッコーマンが始めるフォトコンテストは『あなたの「おいしい記憶」をおしえてください』というもの。記念日特製のカレーライスなど一般消費者に家族や友人と過ごした印象的な食事の場面を撮影してもらう。その写真を消費者に投稿してもらい、特設サイトに掲載して、コンテストを実施するという取り組みだ。ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの利用者増を背景に、消費者が生成するコンテンツを上手に活用し、口コミ効果なども併せて自社サイトを盛り上げるのが狙いだ。結果として、企業イメージの向上や販売促進につなげるという。

 キッコーマン自身はコンテストの運営に必要となる情報システムを所有せず、凸版印刷が提供する「フォトキャンペーン ASP サービス」を利用する。凸版のASPサービスは、フォトキャンペーンを実施するために必要となる応募規約、応募写真の選択や内容確認、お客様情報の入力、応募作品一覧などの各ページをまとめて提供する。投稿者は、凸版の印刷技術がベースになっている画像補正サービス「いい色」を使って写真の加工もできる。

凸版印刷情報コミュニケーション事業本部の神林忠志氏

 凸版はこのサービスを月額150万円で提供する。サービスの開発を手掛けた凸版印刷情報コミュニケーション事業本部の神林忠志氏は「自前で同じシステムを構築した場合、サーバのメンテナンスなどを含めて1000万円はかかる」と話す。

 同じ部署の石垣秀朗氏は「自動車や食品、子ども用品メーカーなど既に引き合いがたくさんきている」と言う。フォトコンテストに限らず、一般消費者を対象に製品やサービスを販売する企業ならば業種を問わず、写真の投稿をベースにした新たなマーケティング策に応用できるという。例えば、玩具メーカーが、あるおもちゃのコミュニティをWeb上につくる場合に、この仕組みをパーツとして利用し、おもちゃのユニークな使い方を消費者に写真入りで投稿してもらうといったことができそうだ。

 凸版は、投稿される写真が公序良俗に反していないか確認するといった監視業務の代行サービスもオプションで提供している。キッコーマンもこの仕組みを利用し、常時掲載コンテンツを監視する考えだ。凸版は、フォトキャンペーン ASP サービスを2008年度に10社、2009年度は20社、2010年度は30社の利用を見込んでいる。

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