年の瀬も押し迫った先週30日、日本IBMが社長交代を発表した。なぜこの時期に? 米国本社との間で何かあったのか? サプライズを予感しながら緊急会見に駆けつけてみると――。
「急な会見のご案内ですみません」
先週12月30日午後4時半、日本アイ・ビー・エムが開いた緊急会見の冒頭で、大歳卓麻社長兼会長(同日時点)はこう語りながら、隣に立つ橋本孝之取締役専務執行役員(同)とともに一礼し、社長交代を発表した。
発表内容は、2009年1月1日付けで橋本氏が社長に昇格し、大歳氏は取締役を退任して会長職に専念するというもの。
大歳氏はこの時期での社長交代の理由についてこう語った。
「まず私が10月で60歳となり、内規の役員定年に達したことが必然的な理由としてある。あとはタイミングを図るだけだったが、新しい時代に向けて新しいリーダーに存分に手腕を発揮してもらうためには、当社の新会計年度が始まる1月1日の交代が、区切りがいいと判断した」
ちなみに発表会見を12月30日に行ったのは、「期末ぎりぎりまで顧客先で仕事をしている社員の気を散らしたくなかったから」と、大歳氏の思惑通りだったよう。ただしトップシークレットだったようで、同日の同社本社での会見は広報関係者も急な対応に追われている様子だった。
橋本氏は中堅中小企業向け事業を合わせて20年近く担当し、システム製品事業やサービス事業などの責任者を歴任。米IBM本社の戦略部門に出向した経験も持つ。大歳氏は橋本氏を後継者に選んだ理由についてこう話した。
「これまでの経験や実績もさることながら、彼の真骨頂は徹底した顧客志向、現場主義にある。そして事業および経営の品質に確固たるこだわりを持っており、その軸がぶれない。そうした手腕を経営トップとして大いに発揮してもらいたいと考え、指名した」
次いで、大歳氏にこう紹介された橋本氏が、「あらためて、年の瀬の押し迫った30日午後4時半にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます」と丁寧に挨拶し、自らの信念や社長交代についてこう語った。
「1978年に入社して以来、名古屋地区で長らく中堅中小企業向けの営業を担当してきたが、この時の経験が顧客志向、現場主義という今の自分の信念となっている。今回、世界的に未曾有の経営環境の中でバトンを受け継いだ形となったが、そうした信念とともにIBMが持つイノベーションを起こす力を考えると、私自身はピンチをチャンスに変えられる非常にいい時期にバトンを受けたとポジティブに捉えている」
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