不況下でも元気な企業が見せた将来への意気込みWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年01月19日 08時48分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

ベテラン営業マンが語った営業の真髄

 ファーストリテイリングの柳井社長の発言は、「2020年の夢」と題して社員へ送ったメッセージに込められたものだ。経営計画に基づく正式な目標値ではないようだが、今年3月で個人営業時代を含めて創業60周年を迎えるのを機に、社員に一層の奮起と結束を促すのが狙いのようだ。

 同社の現在の経営目標は、2010年8月期に売上高1兆円を達成することだ。ちなみに2008年8月期は売上高5864億円、経常利益856億円。「2020年の夢」を実現するためには、毎年20%の増収と20%の売上高経常利益率の確保が必要となるが、同社は先頃、その第一歩となる2009年8月期の連結経常利益の見通しを前期比11%増の950億円と、従来予想に比べて20億円引き上げた。

 そうした好調ぶりを支えているのは、東レと共同開発した防寒性を高めた機能素材「ヒートテック」を使った肌着やニットなどの商品。とくにヒートテック肌着は、昨年9月に前年比4割増の商品量を用意したが、年末までにほぼ売り切れたという店も出ているという。同社のこうした好調ぶりは、景況悪化の中でも費用対効果を求める消費者ニーズをしっかり捉えれば、ヒット商品を生み出せるということを物語っている。

 一方、楽天の三木谷社長の発言は、同社が14日に開催した仮想商店街「楽天市場」出店者向けイベントでの講演で飛び出した。同社は主力のネット通販事業が好調なのを受け、アジア進出を加速。楽天市場をアジア各国の言語で運営するほか、現地でネットを使ったマーケティングや販促を本格化させる構えだ。

 同社によると、昨年12月の楽天市場の流通総額は過去最高を記録した。それもあって、昨年の通年では前の年に比べて25%増えた。5年以内に国内と海外の売上比率を同等にすることで、5年後の海外での年間流通総額を1兆円規模にする方針だ。

 不況下だからこそ、将来への意気込みを示して見せる ―― 両社の経営トップの発言には、そんな強い思いを感じる。両社とも現在の好調ぶりがそれを支えているが、決め手はやはり商品力と営業力だといえよう。

 その2つに関して、かつて情報機器販売会社で競合他社も一目置くほどの手腕を発揮していたベテラン営業マンから、こんな話を聞いたことがある。

 「営業に最も求められる力は、売れそうにないものをむりやり売ることより、売れそうなものをいかにたくさん売るか、だ」

 この考え方には異論もあるかもしれないが、筆者は営業の真髄だと思う。さらにこう書いていてふと気づいた。営業を支援するためのITも、売れそうなものをたくさん売るときに最も効果的な道具なのではないか。

 いずれにしても、まずは「売れそうなもの」を創出し、それを「たくさん売る」仕組みをITも駆使してつくり上げ、不況下を乗り切っていきたいものだ。

PlanITトップはこちら

過去のニュース一覧はこちら

関連キーワード

楽天 | ユニクロ | 経営 | 不況 | ビジネスモデル


プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ