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» 2009年02月02日 08時00分 公開

アナリストが斬るITトレンド:中堅・中小企業ユーザーはどうしている? ストレージ活用実態 (2/2)

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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中堅Hクラスの傾向

 このクラスは大企業に非常に近い傾向を示す。既にFC-SANやハイエンドのNAS製品を導入している企業も少なくない。このクラスの企業が抱えている課題は社内に分散した様々なストレージ機器の管理運用負荷の増大である。そのため大企業と同様にストレージ統合に対する関心が高い。検討されることの多いストレージ統合手段としては以下のようなものがある。

NASゲートウェイの活用

 大容量のFC-SANストレージを導入したものの、運用管理の難易度が高いために使い切れず、結局ファイルサーバにデータの大半を格納しているケースもある。そこでNASゲートウェイを導入し、FC-SANストレージもファイルサーバとして利用できるようにする対策である。NASに合わせたストレージ統合の手段といえる。

ストレージ仮想化アプライアンスの活用

 複数のNASやSANの手前でそれらを束ね、仮想的に1つのストレージとして管理できるストレージ仮想化アプライアンスが中堅企業向けに提供されている。部門単位で異種ベンダーのストレージ機器を導入してきた中堅Hクラス企業が、IT統制などの理由でダウンタイムのないストレージ統合を実現したい場合に検討されることが多いソリューションである。また、このクラスでは大企業と同様にFC-SANの安価な代替手段としてIP-SAN(iSCSI)が今後検討される場面も徐々に増えている。

中小企業クラスの傾向

 次に、中堅Hクラスの対極に位置する中小企業クラスを見てみる。このクラスではデータ量そのものが少なく、ストレージ機器はバックアップ用途として利用されることが多い。データはサーバのハードディスク内に格納することが多く、容量が一杯になった場合には内蔵ディスクの追加やDAS接続で間に合わすことが多い。このクラスにはNASやSANがなかなか普及しない状況であるが、特に大きな要因としては以下が挙げられる。

社内ネットワークへの不安感

 IP-SANの転送速度は1Gbpsであり、中小企業クラスのデータ容量を考えると十分なレベルである。しかしIT運用管理は兼任が大半であるこのクラスでは、計画的なLAN敷設が行われておらず、信頼性がそれほど高くない。そのため、IP-SANによるバックアップに不安を感じ、DAS接続を選びやすい傾向にある。

サーバ個別のバックアップ処理

 このクラスでは各サーバが部門担当者によって個別に管理されていることが多い。バックアップも安価なUSB接続のハードディスクを直接サーバに接続し、データを手動コピーするという方法を取るケースが少なくない。各部門担当者は現状の業務フローを変えたがらず、NASへの統合を拒むことがある。これはストレージだけでなく、サーバ統合における阻害要因にもなっている。

ネットワークストレージアダプタの登場

 最近はUSB接続ハードディスクをNASとして利用することを可能にする「ネットワークストレージアダプタ」が登場している。そのため、上記の「サーバ個別のバックアップ処理」の問題が解決したとしても、すぐにNASへの導入には結びつかない。使い慣れたUSB接続ハードディスクを社内LANに繋ぎ変えて、そのままNASとして利用してしまうのである。

オンラインストレージサービスの登場

 さらに今後大きな影響を与えるのが、オンラインでデータバックアップサービスを提供するSaaSの登場である。中小企業クラスではクライアントPCのハードディスクが故障した際のデータ復旧に悩むケースが多い。1ユーザ、1Gバイト当たり、月額500円程度でクライアントPCのオンラインデータバックアップサービスを提供する例もあり、今後需要が期待されるクライアントPCデータのバックアップ需要がストレージ機器ではなく、オンラインサービスで満たされてしまう可能性も否定できない。


 このように中小企業クラスではSANやNASといったストレージ機器がなかなか普及しづらい状況が続いており、さらに安価な代替手段が登場してきている状態である。

中堅Mクラスの傾向

 中堅Mクラスは中堅Hクラスに近い傾向を示すことが多い。しかし、中堅Hクラスほどに積極的なIT投資は行わない。そのため、FC-SANの導入は少なく、NASが中心となっている。NASについても、NASヘッド+RAIDコントローラとディスクが分離したモジュラー型ではなく、それらが一体となった製品が主体である。抱えるデータ量は複数のストレージ機器を導入するほどではないため、複数のストレージ機器をどう統合するか? というニーズよりは、一体型のNASストレージ機器をどのように拡張可能にすべきか? に関心を抱く傾向にある。今後、サーバ統合と連動してのIP-SAN導入へとシフトしていくかどうかが注目される。

中堅Lクラスの傾向

 中堅Lクラスは最も多様な状況を示す区分であり、中小企業クラスと中堅Mクラスの双方の傾向が混在している。特に経済不況の影響によって、中小企業クラス寄りの傾向へとシフトしている状況が伺える。つまり、期待されていたNASの普及がやや鈍化し、ネットワークストレージアダプタやオンラインストレージサービスを活用するケースが増える傾向を示しつつある。しかし、データを社外に預けることに対するユーザの抵抗感が依然強いことも事実であり、ストレージ機器導入とサービス利用のどちらが大勢となるかについては今後の動向を見守る必要がある。

 上記4つの傾向を2007年から2008年の時間的推移と合わせて図解すると、以下のようになる。

中堅・中小企業のストレージ活用実態マップ(出典:ノークリサーチ 2009年1月) 中堅・中小企業のストレージ活用実態マップ(出典:ノークリサーチ 2009年1月)

 このように中堅・中小企業のストレージ活用実態を見極めるためには、データ容量の推移だけでなく、各年商帯に応じた情報システムの運用管理における特性、オンラインストレージに代表される代替手段の影響といった様々な要因を加味しなければならない。

 なお次回は中堅・中小企業向けストレージ市場における主要ベンダーの戦略や製品について俯瞰していく。

著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)

ノークリサーチ シニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。


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