IT業界の四半期決算出そろう――各社の業績に大きな開き大幅な増益と減益で明暗

EMC、Amazon.com、Data Domainは前四半期に売上高を大幅に伸ばしたものの、そのほかの大半のIT企業は赤字転落の危機にあえいでいる。SAP、IBM、Sun Microsystemsなどの企業では、経常費抑制のために人員削減を進めている。

» 2009年02月03日 16時44分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 eWEEKおよび提携ニュースサービスが報じているように、先週各社が発表した収支決算は、ハイテク業界各社の間で業績に大きな開きがあることを浮き彫りにした。

 「選ばれた少数」の企業の業績は極めて良好であるのに対し、圧倒的多数の企業は危機意識を抱いており、経常費や不要不急経費の削減を迅速に行っている。

 世界的な景気悪化は、業績好調な企業と業績不振の企業の間に巨大な溝を作り出した。例えば、データストレージインフラ市場のリーダーであるEMCは、四半期売上高で初めて40億ドルの大台を達成したのに対し、エンタープライズビジネス管理ソフトウェア分野で世界最大手のSAPは、約3000人の人員削減を実施すると発表した。

 その一方で、不可解な状況も見受けられる。例えば、Data Domainは前年比122%という大幅な増収を発表したのに対し、同社の株価は大きく下落した。これは、同社の利益が1株当たり10セントで、ウォール街が予測していた1株当たり12セントを下回る結果になったからだ。Symantecは68億ドルの赤字を計上したにもかかわらず、ウォール街の予測を上回る業績だったため、同社の株価は3.6%上昇した。

 先週発表されたIT各社の決算内容を以下に要約する。

EMCは過去最高の四半期決算と会計年度

 EMCは四半期の売上高として過去最高の40億2000万ドルを記録した。これは前期比で8%、前年同期比で5%の増加となるもの。

 世界最大のデータストレージインフラ企業である同社の昨年度の総売上高は、前年比12%増の148億8000万ドルとなった。

Data Domainは大幅増収を達成――だが警戒の声も

 複製機能を標準装備した自動データストレージアレイのメーカーであるData Domainは1月29日、1390万ドルの利益を発表した。前年同期は7万6000ドルの赤字だった。

 しかしこの1390万ドルという数字には、繰延税金資産の570万ドルも含まれている。一時的費用を除外したData Domainの利益は1株当たり10セントで、ウォール街の予測の12セントを下回った。売上高は4490万ドルから90%増の8520万ドルだった。

 JMP Securitiesのアナリスト、ピーター・バッシー氏はAssociated Pressの取材で、「同社はハイエンド製品分野で、ますます激しい競争と厳しい環境にさらされるだろう」と述べている。

Amazon.comは好調な四半期決算を発表

 オンライン販売/サービスプロバイダーのAmazon.comは、昨年のクリスマス商戦の好調な売り上げを反映して、予想を大きく上回る四半期決算を発表した。この業績発表を受け、同社の株価は1月30日、約18%上昇した。同社の四半期売上高は67億ドルで、アナリストらの予想売上高の64億4000万ドルを上回った。

 しかしAmazon.comもほかの多くのIT企業と同様、2009年第1四半期は利益が減少するとの見通しを示している。同社では、第1四半期の売上高として45億2500万〜49億2500万ドルを見込んでいる。ウォール街の予測は45億7000万ドル。

Quantumは19%の減収

 データストレージディスク/テープ製品のメーカーであるQuantumは1月29日、同社の第3会計四半期の収支報告において、GAAPベースで3億3400万ドルの営業損失および3億4000万ドルの純損失(1株当たり1.63ドル)を発表した。Quantumの総売上高は2億40万ドルと前年同期比で19%の減少となった。

 しかし減収となったものの、Quantumの第3会計四半期の粗利益率(GAAPベース)は42%と前年同期の35%を上回った。Quantumのリック・ベルーゾCEOによると、この粗利益率は同社にとって8年ぶりの高水準だという。

 「売り上げが低下し、われわれの期待を下回る結果となった。しかしこれを補って余りある成果を、高マージンビジネスへのシフトおよび経費管理体制の確立という形で実現した」とベルーゾ氏は語る。

Symantecは赤字を計上――しかし業績は予想を上回る

 セキュリティ/データバックアップソフトウェアのメーカーであるSymantecは、償却費用計上により68億ドルの四半期損失を報告したが、堅調な売り上げとコスト削減が貢献して同社の営業利益はウォール街の予測を上回った。同社の株価は時間外取引で3.6%上昇した。

SAPは売り上げダウン。3000人の人員削減へ

 業務管理ソフトウェア分野で世界最大のメーカーであるSAPは1月28日、3000人の従業員を削減すると発表した。同社は主要ソフトウェアおよびソフトウェア関連製品の2009年の売り上げ目標を明らかにしなかったが、利益率の予測の前提として、2008年の売上高の86億2000万ユーロに対して、今年は売上高が横ばいか1%減少するという見通しを示した。

 SAPは昨年10月、急激な売り上げ減少を受けて経費削減策を実施した。さらに同社は1月、引き続きコスト削減を進める方針を示すとともに、今年末までに従業員を5万1800人から4万8500人に削減する計画を発表した。IBMも、2009年に2800人の人員削減を実施する方針を打ち出している。

Sun Microsystemsはリストラと景気悪化で苦闘

 Sun Microsystemsは1月27日、米国の景気後退および世界的な経済状況の悪化の影響で、ローエンドのソフトウェアとストレージの売り上げが伸びや悩んだと報告した。UltraSPARCプロセッサ搭載システムなど同社のハイエンドシステムの売り上げも低迷した。

 Sunの2009年第2会計四半期の決算は、同社が多くの分野で打撃を受けていることを示す内容となっており、売上高は前年同期比で10.9%減少した。

Yahoo!は予想を上回る業績――新CEO就任の効果?

 暗いニュースが続いていたYahoo!は1月27日、予想を上回る四半期利益を発表した。広告市場の低迷に直面した同社が、数カ月にわたる経費削減策を実施した効果が現れた。

 アナリストらは10〜12月期のYahoo!業績について厳しい見通しを示していたが、同社が予想外に好調な業績を示したことで、投資家は一安心できそうだ。Wunderlich Securitiesのアナリスト、マーティン・ピコネン氏はReutersの取材で、「一部の弱気なシナリオで言われているほどYahoo!は瀕死の状態ではなかった」と述べている。

 償却費とリストラに関連した一時的費用を除いたYahoo!の四半期利益は2億3800万ドル(1株当たり17セント)と、前年同期の2億570万ドル(1株当たり15セント)を上回った。

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