円天詐欺で考える「電子マネー」の光陰ネットの逆流(11)(2/2 ページ)

» 2009年02月15日 11時10分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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 このほかにも、3月14日よりサービスを始めるJR北海道のIC乗車券「Kitaka」が、一部コンビニなど8社54カ所で使用可能になる。名古屋市交通局と名古屋鉄道が2010年度から共同で導入するICカード乗車券にも電子マネー機能が付加されることが発表されている。なお、2006年から導入されているJR東海のTOICAは、IC乗車券としての機能のみで電子マネーとしての機能は付いていない。

 また、2月23日よりヤマトフィナンシャルが、宅急便コレクトならびにクロネコメール便コレクト「コンビニ・郵便局払い/パソコン・携帯払い」において、「モバイルSuica」決済を開始すると発表している。

 何より大きく報じられたのは、2月4日、イオンとファミリーマートが、イオンの電子マネー「WAON」について業務提携すると発表したことだろう。今秋から、ファミリーマートの約6800店舗でWAONを利用できるようになるという。さらに、マルチメディア端末「Famiポート」で、WAONのチャージや残高照会なども可能となり、地域フランチャイズ約500店舗にも導入される。ファミマはすでに、EdyやSuicaなどでの決済を導入しており、電子マネーの利用幅が広がることになる。

 WAONは、イオングループの店舗など約2万7000店で利用できる電子マネー。買い物200円ごとにポイントやマイルがたまるのも魅力だ。月間利用件数は1300万件、発行枚数は700万枚を超えた。しかも、通常は利用単価が700円の電子マネーにおいて、WAONは1900円の利用単価があるという。イオンの梅本和典CIOは、「全国各地に電子マネーが利用できる“場”があり、グループ会社、各店舗のテナント、パートナー企業を含め多種多様な業態を抱えているなどといったイオンの強みが生かされているからだ」と、WAONが使われる理由を語っている

 NECの取締役常務執行役員・安井潤司氏は「電子マネーの機能を自動販売機に組み込むことで、市場が一気に拡大すると考えています」と語っており、これからのシステム開発動向が注目されるところだ。

 電子マネーはこれだけではない。例えば、家電量販店や、スーパーなどが独自に発行するポイントカード。ここでたまるポイントも、いわばローカルの電子マネーだ。家電量販店の場合、ポイントをつけることで実質的な値下げをしている。そのポイントを使って、1ポイント=1円の買い物ができるサービスが大半だ。昨今の経済危機の中、このポイントが消滅するか価値が変えられてしまうのではないかという不安の声が広がっているという。企業が破綻した場合、ポイントはどうなるのか。

 ポイントサイトやアンケートサイトでためたポイントや、クレジットカードなどで付与されたポイントにも、商品券や銀行振り込み(現金)のほかに、電子マネーに交換できるものがある。

 もし、運営企業の倒産など、不測の事態が起きた場合にこうしたポイントはどうなるのか。ポイントに関していえば、所詮は“オマケ”と考えれば消滅したとしても比較的納得しやすいかもしれない。しかし、現金をチャージするSuicaやEdyなどの電子マネーではそうはいかない。しかし、電子マネーの法整備は進んでおらず、同様の問題を抱えたままだ

 電子マネーの利用に関しては、二重引き落としなどの問題が指摘されている。レジ担当者が誤って同じ商品を2回決済してしまうという事例が発生しているのだ。本来の金額の倍が引かれてしまうわけだが、消費者が注意しないと気付かないことも多い。電子マネーでの支払いだからこそ、レシートはしっかり確認する必要がありそうだ。

 昨年から金融庁は、本格的に電子マネーに関する消費者保護に関する法整備の議論を開始したという。法制化された場合は、「残存ポイントの50%が消費者の還元分として確保されるようにする方向で議論を進めている」と、諮問会議メンバーの慶応義塾大学経済学部の吉野直行教授は語る。しかし、問題の国会情勢が混沌としている現在、実現するのは、はたしていつになるのだろうか。

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