クラウドによるデータ集中と、その危険性を考えるネットの逆流(7)(1/2 ページ)

インターネット経由でソフトウェアやサービスを利用するクラウドコンピューティングが注目されるが、リスクも大きい。クラウド側にシステム障害が起きた際に、ユーザーはただ復旧を待つしかないのである。

» 2008年12月30日 10時09分 公開
[森川拓男,ITmedia]

ネットの逆流過去記事はこちらです。


 2008年のIT業界における最大のキーワードともいえるのが「クラウドコンピューティング」だ。インターネットという雲の向こう側のややこしさは専門業者に任せてしまうというこの方法も、完全ではない。今回は、クラウドのリスクについて考えてみたい。

クラウドの弱点が垣間見えた障害

 12月19日の夜、ブログを更新しようとアクセスしたら、「障害のお知らせ」が表示されてしまった。既報の通り、12月19日の12時半過ぎに、さくらインターネットの西新宿データセンターで発生した電源設備からの発煙および電源供給障害により、ハウジングサービスを利用していた企業のサービスがストップしてしまっていたのだ。さくらインターネット側では同日の19時半に復旧したが、その後、数時間に渡ってサービスの利用ができないものもあった。

 今回の事例では、GREEのSNSや、So-net blog、Seesaaブログなど多くの企業が利用していたサービスでの障害であったために、影響は大きかった。

 自社のサーバを利用してサービスを提供するには、サービスが大きくなればなるだけ費用がかさむ。特に、ITへの投資予算が少ない中小企業などにとっては難しい。そこで利用されるのがハウジングやホスティングサービスである。いわゆるレンタルサーバを活用することで、サーバや回線を自社で用意することなく、サービスを提供できる。サービスのユーザーに、ハウジングやホスティングサービスの存在を意識させることはない

 逆に、システムの管理を「人任せ」にしてしまうことに、ホスティングサービスの問題点がある。今回はハウジングサービスのみに被害が発生したが、一般にホスティングサービス側が障害を起こした場合、ユーザーは復旧を待つしかない。

 セキュリティ企業の米Websenseは、2009年のセキュリティ動向予想を発表したが、その中でクラウドを悪用した攻撃が急増すると予測しているのも不安要因に見えてしまう。

企業のクラウド化に必要なのは「信頼」

 しかし、企業で本格的にクラウドを進めていく下地はできつつある。

 12月1日、クラウドコンピューティングの国内普及を目指す団体「VMware クラウドサービスプロバイダ協議会」が設立された。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)やソニーなど11社が正会員として参加するほか、100社を目標に賛助会員も募集するという。

 さらに12月9日には、国内のソフトウェアベンダーで構成するメイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)とNTTコミュニケーションズが、SaaS型のアプリケーションサービスの共同技術検証を、2009年1月から6月までに実施すると発表した。従来の国産アプリケーションをクラウドで提供しようとする動きである。

 マイクロソフトも、クラウドOS「Windows Azure」を発表するとともに、新興企業を支援するプログラム「Microsoft BizSpark」を発表した。米Yahoo!は、傘下のZimbraで、教育機関向けのクラウドサービスを開始

 12月11日には、食品大手のキッコーマンが、凸版印刷のASPサービスを基盤にしたフォトコンテストの実施を発表した。

 マルウェア対策では、スペインのセキュリティ企業Panda Securityは、5月からSaaS形式のPCセキュリティ管理サービス「Panda Managed Office Protection(PMOP)」を提供すると発表した。

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