iPodから情報漏えい、職場に持ち込むモバイル機器に注意せよ会社に潜む情報セキュリティの落とし穴(2/2 ページ)

» 2009年02月17日 07時30分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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モバイル機器を規制する

 モバイル機器による情報漏えいを防止する対策にはどのような方法があるのでしょうか。一般的にみられるケースには以下のものがあります。

  1. 出入り口にミニロッカーを設置し、携帯電話やデジタルカメラなどの情報機器を入れてから入室する
  2. 入退室時にガードマンが身体やカバンの中を確認する。金属探知器を設け、警報が鳴ったら徹底して対象物を調べて警報が鳴らなくなるまで確認する
  3. 私物の持ち込みを一切禁止し、入口にあるロッカーに入れてから入る。持ち込む場合は透明なビニールバッグに入、すぐに中身が確認できるようにする。ガードマンによる抜き打ち検査も実施する
  4. 特別な装置(市販品もあり)を使って一部の区画で携帯電話の電波を遮断し、通話や電子メールを使用不可にする
  5. USBメモリやSDカードなどの使用は全て登録制にする。未許可の機器はPCに接続できないようにシステムで保護する。許可した機器でも誰がいつ、どのように使用したかを監視する

 対策を実施している場合、これらを組み合わせて情報の盗難を防いでいるようです。しかし、このような対策を導入しているのは大企業や上場企業、データセンター、セキュリティ強化を標榜している会社など一部に過ぎず、大部分の企業で導入されていません。そのような企業では、モバイル機器による情報漏えいが十分に理解されていない、もしくは優先的に対策への投資をしていないようです。

 セキュリティ対策への投資について前回言及しましたが、原則としては費用対効果の高いところから重点的に行うことが大切です。社会的にもその利用が問題視されているWinnyなどのファイル交換ソフトウェア対策がまず挙げられていますが、モバイル機器に対しても目を向けるべきでしょう。

簡単にできる防止策

 モバイル機器に対するセキュリティ対策への投資が難しい場合、容易に導入できる防止策には以下のものがあります。USBメモリによる情報漏えい対策を以前に紹介しましたので、ここではUSBメモリ以外のモバイル機器における対応策を紹介しますが、USBメモリと異なるのは機器へデータをコピーできるというのに加えて、外部へのアクセスを通じてそのデータを伝送できるという点を理解する必要があります。

「情報のコピー」を防止する

 中小企業のように大きな投資が難しい企業でも比較的安価に防止する方法が、PCのインタフェースに許可した以外のモバイル機器を接続させないというものです。こうした管理ができるソフトウェアを導入し、許可する対象を可能な限り制限します。Active Directoryなどの認証機能と連携することで規制をより強化することができ、規制を実施するPCの台数が少ない場合でも安価に導入できるメリットがあります。このジャンルの製品は歴史が古く、実績や安定性の点からも信頼できるものが多数存在しています。

「情報の転送」を防止する

 通信機能を搭載した機器を持ち込ませない方法と、持ち込んでも通信をできないようにするという2つの方法があります。前者の場合、先に挙げた機器を一時的に保管するロッカーの設置や警備員による検査、金属探知器の設置、透明なバックの利用などがあります。廊下などにすぐに設置でき、価格も安価なことからロッカーの設置が最も費用対効果が高いでしょう。ロッカーに保管できないというケースもありますが、そもそも持ち込み自体を禁止しているわけですから、持ち込もうという行為自体を違反に問うことができます。

 後者の場合、「携帯電話妨害機」と言われる認定された妨害電波の発生装置を導入することになります。装置の価格は5〜10万円程度と安価であり、一定の範囲で携帯電話による通信を遮断できます。なお、有事に備える場合は緊急連絡用に有線電話を設置する必要があるでしょう。

 モバイル機器へセキュリティ対策でも、まずはできるところから着手し、地道に強化していくというアプローチが大切になるのです。

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萩原栄幸

株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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