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» 2009年03月09日 08時00分 公開

急遽救世主に:クラウドが救う経済危機下の企業経営 (2/3)

[林雅之,ITmedia]

クラウドを活用する企業の現場

 実際にわたし自身、中小企業をはじめ、クラウドを採用する企業に足を運び、企業の経営者や情報システム担当者などさまざまな立場の方から話を聞き、どのようにクラウドコンピューティングを理解し、活用しているのかを聞いてみる機会があった。先進的なITを活用している企業の多くは、経営者が自らITを学び、経営戦略と照らし合わせながら活用している。経営者は自社でシステムを構築することは考えておらず、いかに企業の経営にITを活用し、自社のコアコンピタンスに集中させるかといったことを念頭にいれている。「経営者は自らが率先してITを学ばなければならない」というように、景気が低迷する時期だからこそ、自社に生産性を高め企業経営に生かしていく発想が求められている。

 ベンチャー企業などが新たにサービス展開をしていく上でもクラウドサービスは有効だ。クラウドから必要なコンピュータリソースを集め、自社が強い部分だけに注力しクラウド基盤上にサービスを展開していくことが可能だ。大企業に匹敵する規模のサービスが中小企業においても可能な時代になったといえるだろう。

 もちろん、クラウドを活用するのは、中小企業だけではなく大企業も採用する動きがある。日本郵政が、セールスフォース・ドットコムが提供する PaaS(プラットフォームとしてのサービス)に該当する「Force.com」を活用し、自社のアプリケーションを開発し、運用している。最近では、JTBがメールサーバの更改に伴い、Googleが提供するクラウドサービスのGoogle Appsの採用を前向きに検討しているというニュースも大きな話題となっている。

クラウドのリスクへの備え

 しかし、クラウドコンピューティングを採用すれば、万全というわけではない。2月24日にGmailの大規模障害が起きた。これまでの障害とは大きく異なり、2時間半にわたってGmailが利用できない事態となった。グーグルの公式発表によると、この障害によって世界中のGmail、そして有料サービスも含むすべてのGoogle Appsの利用ユーザーがGmailを利用できなくなっている。2008年には、少なくとも4件の大規模障害がおき、2009年1月にも障害が起きている。頻繁に発生するこれらの障害は、企業がGmailそしてGoogle Appsを導入する際の大きな不安材料の一つになる。

 「Google Gear」をインストールしておけば、メールの送受信はできないもののそのほかはオフラインでも作業することができる。だが、クラウドサービスにつながらない環境になれば、業務に大きな障害をもたらす危険性があることも改めて浮き彫りになった。

 クラウドサービスは未来永劫サービスが提供され続けられる保証はない。クラウドサービスを提供する事業者の経営状態、サービス内容、セキュリティ対策、運用保守体制などさまざまな視点から見極め、自社に適したクラウドサービスを見極め、既存システムとの連携、そして経営者層への説明といったさまざまな課題をクリアしていく必要がある。

 クラウドサービスを利用するには、インターネットだけでなく、VPN(仮想プライベートネットワーク)やNGN(次世代ネットワーク)などのネットワーク、iPhoneやネットブックなどのモバイル端末も含めて考えていくのが良いのではないだろうか。自社に適したクラウド環境というのはどういうものなのか、端末やネットワークも含めてデザインをしていくことが今後さらに重要になっていくだろう。

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