「誰でも使えるクラウド」を作る――サイボウズ、今夏にクラウドを新展開サービス開発で生き残るベンダー(1/2 ページ)

サイボウズは小規模企業などを対象としたクラウド型サービスを打ち出すこと明らかにした。グループウェアの機能を絞ってSaaSとして提供することで、グループウェアの導入が進んでいないSOHOなどの企業を取り込む。主力のパッケージソフトに加え、ネットサービス事業を新たな収益源にする構えだ。

» 2009年03月26日 09時38分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「誰でも使えるクラウドにしたい」。こう語るのはサイボウズのネットサービス事業部事業企画部で部長を務める丹野瑞紀氏だ。

 グループウェア製品やサービスを展開するサイボウズはアイティメディアの取材に対し、グループウェアを柱にした「クラウド型サービス」を今夏に展開することを明らかにした。同社はこれまで、自社開発したパッケージソフトを売り、その機能をSaaS(サービスとしてのソフトウェア)として提供してきたが、新サービスは初めからSaaSとして提供することを前提に、水面下で開発を進めている。機能を絞り込んだSaaSを従来よりも安価で提供できるという。

 企業のグループウェア導入が一巡し、パッケージソフトでの利益拡大が難しくなっている中、グループウェアに関連するSaaSをゼロベースで開発し、「パッケージソフトありきのSaaS」では実現できなかった新たな顧客の開拓に糸口を見いだす。クラウド型サービスで先行するGoogleやIBM、Microsoftとは異なる小規模の企業を取り込むSaaSを展開し、主力のパッケージソフト以外の事業の柱に育てる意向だ。

企業間の情報共有に長けたクラウド型グループウェアを数百円で

 同社が構想している新サービスは、「企業内に加え、企業間の情報共有が実現する低価格のグループウェア」(丹野氏)をインターネット経由で提供し、ユーザー単位で月額課金をするものだ。ファイル/文書/スケジュール共有や掲示板など、グループウェアの基本機能を絞り込んで提供する。

image 小規模企業向けのライバル製品は「Google Apps」や「Lotus Live」と丹野氏。使いやすさとサイボウズ製品が培ってきたノウハウで勝負する

 機能の目玉になるのは、企業間での情報共有が実現する機能を追加する点だ。一方の企業でグループウェアのアドレス帳や利用者のプロフィールを更新すると、他方の企業の情報も同時に更新されるといった機能の実装を想定している。「(ビジネスユーザー向けのSNSである)LinkedInのような役割を果たすグループウェアに仕上げたい」と丹野氏。企業間の情報共有やコラボレーションを推し進める機能で、従来のグループウェアとの差別化を図る。

 具体的なサービス内容の検討と機能の開発はこれから進め、8月にはサービスを開始する予定。価格は1ユーザー当たり「月額100〜200円程度」と安価に設定する。ユーザー数を限定して無料でサービスを提供したり、1年程度の無償の試用期間を設けることも考えているとし、グループウェアの導入で障壁となっている価格面の負担を極力取り除く販売戦略を立てることを示唆した。

クラウド型サービスは小規模の企業に受け入れられるか

 グループウェアなどの機能をインターネット経由で提供するサービスは活況を呈している。企業向けのクラウド型サービスでは、Googleの「Google Apps」やIBMの「Lotus Live」、Microsoftの「Business Productivity Online Suite」などが急先鋒だ。サービスごとに対象とする企業の規模は異なるが、現段階では大規模の企業での導入が目立つ。

 これに対し、サイボウズの新サービスは、数十人規模の企業やSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)を主な対象にする。こうした企業はシステム管理の負荷や価格がネックとなり、グループウェアの導入が進んでいない。

 「使い勝手に優れたグループウェアを安く使えるなら、小規模の企業が導入するきっかけになる」(丹野氏)。会議室の施設予約機能など、日本の企業文化に合わせた作り込みをしてきたと自負するサイボウズ製品の機能を絞り込み、安価なSaaSで提供することで、導入を踏みとどまっていた企業のニーズをすくい上げられると考えた。

 新サービスの要素をキーワードで表すと、「SaaS、クラウド」「コラボレーション」「ソーシャル」になると丹野氏は言う。こうした言葉に対して感度の高いIT関連のベンチャー企業などを中心に、新サービスを訴求する考えもある。「こうしたキーワードに関心を持つ企業ユーザーや情報システム部門の人材を巻き込めれば、導入が拡大する」(丹野氏)と見るからだ。

 一方で、グループウェアを導入しておらず、IT関連の流行を知らない企業にとってカタカナ言葉は響きにくい。こうした企業には、「ネット経由で簡単に導入できるグループウェアとして売り込む」(同)など、同社のこれまでのノウハウを生かす売り方を取る。

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