ポイントプログラムの勢力図が塗り替わる時Next Wave(1/2 ページ)

さまざまな業界で導入され、交換市場が拡大するポイント・マイレージ。その年間最小発行額は約8000億円と推計される中、国際財務報告基準に沿った会計処理の変更で、企業ポイント連携も大きく再編されていくという。

» 2009年04月07日 10時57分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

国内のポイント市場環境はいっそう激化

 日本人はポイント好きな国民である。家電量販店やレンタルビデオ、コンビニなど多種多様なポイントプログラムが存在し、利用者の多くがそれらをきちんと管理して地道に貯め込んでいるのは世界でもめずらしいそうだ。

 ポイントプログラム先進国のイギリスでは、量販店のテスコが導入するクラブカードや共通ポイントのネクターポイントが有名で、アカウント数はそれぞれ1千数百万にも及ぶなど顧客ロイヤリティ戦略が発達しているが、日本ほどのバリエーションは見られない。

 日本では何らかのポイントを保有している人は9割以上存在し、単なる値引きや顧客囲い込みという意味でのポイント付与では魅力が薄れていることも事実だが、そんな中でも2007年以降、JR東日本の「Suicaポイント」や、セブン&アイ・ホールディングスの「nanacoポイント」、AEONの「WAONポイント」、リクルートの「ポイコ」など、関東圏だけでも多大な影響力を持つプレイヤーが次々に参入し、ポイント発行規模が拡大している。

 「この1〜2年の間に国内のポイント市場環境はいっそう激化する様相をみせている」

「ポイント・マイレージの年間発行額は右肩上がりで順調に推移するだろう」と予測する野村総合研究所の冨田勝己氏

 そう話すのは、野村総合研究所(NRI)の金融戦略コンサルティング部で主任コンサルタントを務める冨田勝己氏だ。3月25日に開催したNRIメディアフォーラムで、ポイント・マイレージの最新動向を解説し、「ポイントの本格的な共通化を前に、擬似的な共通化で連携を強化し、一大経済圏を築こうとする流れが強まるだろう」という予測を示した。

 ところで、日本では年間どれほどのポイントが発行されているのか。NRIが発表した推計によると、国内でポイントを発行する9業界の売上上位企業における、2007年度のポイント・マイレージの年間最小発行額はおよそ8000億円という。“最小発行額”としているのは、家電量販店などが実施する来店ポイントやポイント倍増セールなど金額化が困難なものを含めると、実際にはこの1・5〜2倍のポイントが発行されていると考えられるからだ。

 NRIでは、2008年度は不況の影響で若干目減りし、7861億円に落ち込むと見ているが、クレジットカード業界のポイント付与率は今後も0・5%を維持するとともに、コンビニのポイントプログラムが牽引役となって、2009年度からは右肩上がりで推移し、2013年度には8432億円まで増加すると想定している。

消費者の期待と企業の認識のズレ

 では、ポイント・マイレージを保有している消費者はどんな業界のポイントを貯めているのだろうか。NRIが2005年9月に実施した「情報通信サービスの利用に関するアンケート」によると、総合スーパー(43・4%)、携帯電話(42・7%)、家電量販店(41・2%)がトップ3で、ドラッグストア(36・2%)、クレジットカード(26・5%)、レンタルビデオ等(23・4%)と続く。一方、人気のありそうな航空会社系のマイレージポイントは9・7%と、意外にニッチな保有にとどまっている。

 上位のポイントプログラムに見られる傾向として、冨田氏は「貯めてはいるけれど、積極的に貯めたいとは思わないという消費者意識のギャップがある。特に、携帯電話やクレジットカードなど生活者の大半が保有しているはずの分野でマインドシェア(消費者の心理におけるブランド占有率)が低い」と分析する。

 その上で同氏は、消費者の期待と企業の認識のズレも指摘する。経済産業省が2008年8月に行ったポイントに関する調査によると、消費者は企業側のポイント付与率や交換先の変更をある程度認めながら、付与したポイントを使えるようにする義務を負うと考える人が9割存在し、ポイント企業が倒産した場合は、全部もしくは一部のポイントを保護してもらいたいと考える人も8割以上という結果になった。

 また、ポイントプログラムに個人情報を登録することについては8割近くが抵抗あると答え、その個人情報を基にしたマーケティングでは6割の人が登録した企業以外の企業から商品やサービスの案内を受けたくないと答えている。

 一方、事業者の認識としては、ポイントについて大部分の企業は保護を確約せず、サービス内容の変更については事前に通知しているものの、告知期間はさまざまな状況だ。また、企業が倒産した場合にポイント保護を認める企業も存在しない。さらに、個人情報の利用についても、グループ内の企業間で共有し、登録した企業以外の企業から情報提供は行われているのが実態だ。

ポイントの年間発行規模は2013年に約8400億円超の規模に成長(出典:野村総合研究所)
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