富士通の経営方針説明会が3月30日に開催された。富士通はx86強化を表明したが、日本および世界市場におけるIBMやHP、NEC、Dellといったライバル企業の壁は低くない。
3月30日、富士通の経営方針説明会が開催された。野副州旦社長とは2008年暮れにITmediaの新春インタビュー以来、久しぶりにお会いした。大みそかのインタビューは12月初旬に行われ、その時多くの企業はここまで景気が極端に悪化するとは見通せていなかった。わたしの感じとして、それは野副社長も同じだったと思う。しかし、事態はわれわれが予測したよりはるかに急速に程度も酷く悪化した。そんな中で、今回の発表は昨年発表した富士通Siemensが正式に富士通の100%子会社になるタイミングで行われたのだが、多くの参加者から示された興味はむしろ全く別のところにあった。
ちょっと旧聞に属する話かもしれないが、IBMが米Sun Microsystemsを17日終値に約100%のプレミアムを上乗せして65億ドル買収する交渉に入ったとロイターが報じた。その後交渉決裂が報じられたが、この話題について、記者会見で多くの記者、アナリストから野副社長の見解を求める声が出た。
野副社長は「Sunのマシンには多くのユーザーがついていて、それへの支持は一時に変化することはない。IBMも買収したからといって、すぐにその辺を変えることもないだろう。従って、われわれはユーザーの求める製品を引き続き供給していくだけだ」と回答した。
これを額面どおり受け取っていいのかちょっと疑問がある。IBMがSunの買収に乗り出した背景を、わたしはオープン系の覇権を握るためだと考えている。既に、SPARCやSolarisの影響力は低下し、ビジネスとしてそれほど魅力がないのは自明の理だが、JavaとSunが買収したMySQLはオープン系、Webの世界で影響力を増しているといって過言ではないだろう。また、Sunを支持する人たち(コミュニティーの信者)を取り込むというのは、ライバルのHPが築き上げたオープン系の世界で、IBMの影響力を高めるという点でかなり賢明な戦略だといえる。
どうも、富士通はハードのことばかり考えていて、IBMの真の狙いを見誤っているような気がしてならない。
ちょっと前の話になるが、IDC Japanが2008年の日本のサーバ市場の現状に関する調査結果を発表した。その中で、メインフレーム市場が堅調だったという話が出ていた。 わたしはユーザー調査も専門にしていた経験があり、また、大手企業ユーザーとのインタビューを担当している関係から、日本のユーザーがメインフレームから離れられない理由をよく理解しているつもりだ。
2007年から2009年に大量の買い替え需要があることを知っていた。しかし、今回の買い替えサイクルはさすがにオープン系に流れると見ていたが、現実にはそうならなかったようだ。多くのユーザーは使い慣れたメインフレームの新しいプラットフォームを選択したようだ。
しかし、好調なメインフレームの世界にも大きな変化が訪れようとしている。IBMが昨年発表したz10であり、HPが3月に発表したHP Integrity NonStop NS2000が象徴している。両機とも驚くべきはその価格にある。両方とも実用に耐える最小システム構成で2500万円程度といずれも今までのメインフレームの常識的な価格を覆す。
zシリーズはIBMの主力OSであるMVSが搭載され、Linuxが動作可能だ。NonStop Integrity XCも同社の主力OSであるHP-UXにこちらもLinuxが搭載可能となっている。
どちらの会見でも日本企業のメインフレームからの移行に関する意欲を聞いたが、両社とも非常に積極的な見解を示した。また、ユーザーのインタビューでも、国産ベンダーの先行きを危ぶむ人も多い。となると、両社のターゲットはNEC、富士通の国産ベンダー2社となる。メインフレームを担当している両者のスタッフにこの話をよくするのだが、返ってくる答えは毎回「日本のユーザーが海外製のプラットフォームに移行することなどあり得ない。海外のベンダーは日本のベンダーのようなかゆい所まで手が届くような手厚いサービスをすることなど出来ないから」だそうだ。
しかし、この話はPC9801に関して90年代の終り、わたしがNECのPCの責任者から受けた回答「日本語の壁はそんなに簡単に破れない」と似通って聞こえる。
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