「ダメ営業・コンサル」の域を抜け出せビジネスマンの不死身力(1/2 ページ)

自分の経験を得意気に話し出す営業やコンサルタントを顧客は信用しない。ではこれらの職種に必要な能力は何か。コーチングの視点から考える。

» 2009年05月30日 08時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

 自分の経験を得意気に話し出す営業やコンサルタントを顧客は信用しない。ではこれらの職種にはどういった能力が求められるのか。コーチングの視点から考えてみよう。

不況の時代に元気がいいリフォーム会社の秘密

 先日、不況のご時世に元気がいいリフォーム会社を特集したテレビ番組を見た。その会社は女性が設計を手掛けており、顧客のところに営業コンサルティングに行く場面が放映されていた。家に着き、あいさつを済ませると、その建築士は施工主に質問をし始めた。台所のオリーブオイルを見ながら「パスタをよく作られるのですか」「ご主人はいつも何時ごろに帰宅されるのですか」「洗濯は朝されますか、それとも夜ですか」……。こうした質問は一見リフォームとは何の関係もなさそうである。

 一般的なリフォーム業者は「キッチンを対面にしたい」という施工主に対して、「対面にするなら、いま流行はこのタイプで……」などと言いながらカタログを出すだろう。

 その建築士はなぜリフォームとまったく関係のない質問をしたのだろうか。建築士はこう答えた。「顧客のライフスタイルが分からないと、いいご提案はできないのです」――。彼女が切り出す意外な質問に施工主は戸惑いながらも、「親身になって考えてくれて安心感を持った」と話していた。建築士が独自に作成した質問リストは200にも上るという。

営業やコンサルティングはカウンセリングに近い

 この建築士は顧客の自宅に行く際は「カウンセリングに行く」という意気込みを持つそうだ。カウンセリングは、悩んでいる人の話を親身に聞く職業である。一方で、営業やコンサルティングは顧客の悩みを解決するための仕事だ。わたしの意見では、良い営業担当やコンサルタントほど、まず顧客に問いかけ、親身に話を聞くことからはじめる。一方、ダメな担当は顧客の話をほどほどに切り上げ、「御社に最適なソリューションは」と飾り立てた専門用語を並べ、提案をはじめてしまう。

 良いコンサルタントというのは、コンサルタントである前に、顧客の悩みを聞くカウンセラーであるという意識を持つ必要がある。プレゼンテーションなどのスキルはその次だ。

顧客は欲しいものを分かっていない

 なぜ、提案の前に顧客が困っていることに耳を傾ける必要があるのだろうか。それは「実は顧客は欲しいものをよく分かっていない」からだ。

 例えば、リフォームで顧客が「オール電化にしたい」と言ったとする。普通のリフォーム業者なら「オール電化ですか? 最近オール電化にされる顧客が多いです。エコキュートにすれば空気で電気が作れますし、地球にも優しいですよ」とでも言うのだろう。

 一方、カウンセリングができるリフォーム業者なら、「なぜオール電化にしたいのですか」「今、何にお困りですか」「よく作られるメニューは何でしょうか」「一度にたくさんの調理をしますか」などと聞く。「8人家族で一度にたくさん料理を作る」「中華料理を作ることが多い」といった答えが返ってきたら、ひょっとしたら強力な火力のガスレンジの方が最適なのかもしれない。

 これは、IT業界でもまったく同じことが言える。

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