通信業界のご意見番が訴えるクラウド時代の警鐘Weekly Memo(1/2 ページ)

インターネットイニシアティブ(IIJ)が先週、クラウドサービスの取り組みに関する説明会を開いた。通信業界のご意見番でもある同社の鈴木幸一社長の発言に注目した。

» 2009年06月01日 08時43分 公開
[松岡功ITmedia]

クラウドは既存事業の発展・拡大版

 「そもそもインターネット自体がクラウドコンピューティングじゃないか、アウトソーシングとどこが違うのか、と言ったら周りに(そんな発言をしないようにと)怒られてしまいまして……。どうやら私には、そうした新しい言葉を創って事業にしてしまうというセンスがないようで……」

 IIJが先週28日に開いたクラウドサービスの取り組みに関する説明会で、同社の鈴木社長はこう切り出した。日本のインターネット企業の老舗であるIIJを1992年に創業し、経営者としてさまざまな修羅場をくぐり抜けてきた鈴木社長は、今や通信業界のご意見番としても確固たる存在感を持つ。

 そんな鈴木社長のユーモアと自虐と皮肉を込めた挨拶で始まった説明会で、IIJはこれまで培ってきた技術や製品・サービスをもとにした、今後のクラウドサービスに関する事業戦略を明らかにした。

 「IIJグループは、1990年代にデータセンターでのコロケーション、Webホスティングサービスを開始するなど、この分野において過去10年以上の実績がある。インターネットを本業としている当社にとって、クラウドコンピューティングへの取り組みは新規参入ではなく、既存事業の発展・拡大と捉えている」

 同社の時田一広 取締役ソリューションサービス本部長はまず、IIJにおけるクラウド事業をこう説明した。そして2000年には、ITリソースを必要な時に必要なだけ提供する「リソース・オンデマンドサービス」という概念を掲げ、企業向けアウトソーシングサービス「IBPS」を開始。さらに分散処理基盤などの独自に開発した技術を組み合わせることで、IIJのクラウドサービスを整備していく考えだ。

 説明会ではそうした独自の技術から、大量のデータ処理に適した分散処理基盤「ddd(distributed database daemon)」や、数千台規模のサーバ運用の効率化を可能にする「次世代ホストネットワーク(NHN)」、エコ・セキュアなモジュラー型(コンテナ)データセンターなどの内容が披露された。

説明会に臨むIIJの鈴木幸一社長

 時田取締役はIIJのクラウドサービスについて、「国内最大級のインターネットバックボーンを運用してきたネットワーク技術、数千台のサーバ運用技術とソフトウェア資産、数千社の顧客基盤を生かし、独自の技術を組み合わせることで、当社ならではのサービスを展開していきたい」と語った。

 詳細な計画については現在検討中としているが、今年末を目処に既存のデータセンターにおけるクラウド基盤の構築を図り、ハードウェアリソースおよびOSや仮想化基盤を提供するIaaS(Infrastructure as a Service)領域から順次、サービスを拡大していく計画だ。

 そして、説明会では鈴木社長から、こんな問題提起の発言があった。

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