実用化目前のセマンティック検索とビジネスへのインパクトNext Wave(1/3 ページ)

検索目的の細分化や多用途化によって従来のキーワード検索では限界が見えてきた。新たな検索技術に求められるのは、利用者のニーズを正確に把握する技術と検索対象の情報の中身を正確に理解する技術。そんな中、セマンティック検索技術が実用段階に入ってきた。

» 2009年06月25日 19時50分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

検索を取り巻く環境変化と検索技術の変化との間に乖離

 Googleが設立された1998年から10年以上が経過した今、キーワード検索は最も身近なWebツールとして毎日のビジネスや日常生活に溶け込んでいる。

 だが、現在主流のキーワード検索の限界を指摘するのは、野村総合研究所の情報技術本部で技術調査部の副主任研究員を務める武居(たけすえ)輝好氏だ。恒例となった同社の「ITロードマップセミナー SPRING 2009」で検索技術の進化について講演した同氏は、「検索を取り巻く環境変化と検索技術の変化との間に大きな乖離(かいり)が生じ始めている」と語り、検索用途が拡大している現在、汎用的な検索エンジンだけですべてを満足させられるのはもはや困難になりつつあるという。

 現在、一般ユーザーのWeb検索は、企業サイト内の商品・サービス・サポートの検索や、TwitterやFacebook内の書き込み検索など目的が細分化しつつあり、またビジネス上の検索用途もBIやCRM、コンプライアンス管理などの業務プロセス支援や、ブログやSNSなどのソーシャルメディアを収集対象としたCGM(Consumer Generated Media)マーケティング支援などの用途にも利用されるようになっている。

 既にコールセンターなどでは、検索エンジンがオペレーターを支援するために会話の内容をウォッチして適宜テキスト化し、それをもとに構文解析して必要な情報を自動で提示することで、通話時間の短縮とサービスレベルの向上を実現している事例もあるという。

「これからの検索技術は利用者の検索ニーズの正確な把握と情報の中身の正確な理解が必要」と語る野村総合研究所の武居輝好氏

 この事例が示すのは、従来の単純なキーワード型検索ではなく、利用者・利用シーンごとのニーズにあった情報提供が求められているという事実だ。

 現在利用されているキーワード型の検索エンジンの構造は、入力されたキーワードをもとにクエリを決定する入力処理部、情報の収集と抽出を行うマッチング部、検索結果の表示順を決定する出力処理部の3つのブロックで構成されている。次世代の検索エンジンで問題となるのは、入力処理とマッチングの2つだ。Googleであっても、キーワードを正確に入力することが前提で、しかもキーワードにひも付いた膨大な検索結果と利用者のニーズとのギャップをいまだに埋められていない。

検索結果と利用者のニーズのギャップを埋めるためには何が必要か

 武居氏は、これからの検索技術のトレンドは大きく2つ存在するという。その第1は、「利用者の検索ニーズを正確に把握する技術」だ。同氏は従来のキーワード検索がカバーできない3つの領域の新たな検索技術に着目する。その1つがキーワードは示せるが必要となる情報があいまいな場合の「連想検索」。キーワードと関連深いキーワード(類似語ではない)を提示することで新たな気付きを与えるもの。キーワードに関連性の深さを定量化した連想辞書が不可欠となるが、単語の出現位置や頻度などを統計処理することで自動的に辞書を作成することができる。

 2つ目が、反対に必要なもののイメージがあるがキーワードが示せない場合の「感性検索」。キーワードの代わりに、好みの画像イメージやツルツル・ぬるぬるといったフィーリングを表現したテキストを用いて利用者の嗜好を抽出し、検索対象の特徴量と感性パラメータを変換する感性モデルを作り、そのスコアリングで検索結果を出す。この感性モデルの出来不出来で検索精度が左右される。

 さらに、3つ目はキーワードも認識もあいまいな場合は「対話型検索」。自然言語による対話を通じて利用者にふさわしい情報を抽出し、潜在的なニーズを掘り起こす。その基本は対話シナリオに沿った情報収集と対話制御機能による対話の組み立てにあり、どこまで人対人の対話に近いシナリオが作れるか、さらには利用者に対話を継続させるモチベーションの維持が検索精度やユーザビリティを決定する。

 「これらの3つの検索技術には一長一短があり、適用する際には適材適所での活用が重要となる」(武居氏)

従来のキーワード検索がカバーできない3つの領域の新たな検索技術
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