Microsoftのオンライン版Office、差別化ポイントは「オンプレミス」余裕で“歓迎”のGoogleに対抗するには(1/2 ページ)

オンラインスイートではGoogle、Zohoに後れを取ったMicrosoftだが、同社のオンプレミス型の配布オプションは、クラウドに抵抗感を持つ企業に受け入れられる可能性を持つ。

» 2009年07月14日 18時07分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftは7月13日、米GoogleやZohoなどのWebベースのコラボレーションソフトウェアメーカーの陣営に対する攻撃を開始すべく、同社のワープロ/プレゼンテーション/表計算/メモアプリケーションのブラウザベース版「Office Web Applications」を発表した

 Office Webスイートは「Office 2010」の主要なサブセットとなるもので、Word、PowerPoint、Excel、OneNoteで構成される。ニューオーリンズで開催の「Worldwide Partner Conference」でMicrosoftは13日、Office 2010のテクニカルプレビュー版をリリースした。

 ただし、Office Webのプレビュー版のリリースは8月になる見込みだ。同スイートのアプリケーションはMicrosoft Internet Explorer、Mozilla Firefox、Apple Safariの各ブラウザ内で動作する。

 Office Webを発表したMicrosoftは現在、重大な時期を迎えている。同社はオンプレミス型プロダクティビティアプリケーション(ユーザーが自分のコンピュータにインストールするアプリ)のソフトウェア市場では90%以上という圧倒的シェアを誇るが、GoogleやZohoなど多数の企業がコンシューマーおよび企業ユーザーに対して「ソフトウェアプロバイダーがホスティングするSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型アプリが将来のオフィスコンピューティングの主流になる」とアピールしている。

 現在、175万社以上の企業がGoogle Appsを利用している。Google Appsにはワープロ、表計算、プレゼンテーションの各アプリに加え、「Google Sites」(Wikiツール)や「Google Video」などの企業向けコラボレーションアプリが含まれる。この勢いに押されてMicrosoftが対抗策として打ち出したのがOffice Webだ。

 Microsoft Office担当コーポレート副社長の沼本健氏によると、Office Webは、Webベースのアプリケーションの基準をさらに引き上げるものだという。3つのオプションが用意されるからだ。最初のオプションは、Windows Liveサービスを通じて同スイートを無料で利用できるというもの。Windows Liveのユーザーは4億人。

 Microsoftにとって重要な差別化要因となるのが、企業向けのオプションだ。同社はMicrosoft Online Servicesを利用したホスティング型ソリューションに加え、オンプレミス型ソリューションも提供する。「ホスティング型ソリューションは、ユーザーがサブスクリプションを購入するという方式だ。オンプレミス型は、既存の9000万ユーザーのOfficeボリュームライセンス顧客を対象としたソリューションで、これらの企業は社内のサーバ上でWebアプリをホスティングできる」と沼本氏は米eWEEKの取材で語った。なおMicrosoftは今のところ、これらのオプションの価格を明らかにしていない。

 「当社が提唱するソフトウェア+サービスという価値命題を受け入れようと考えている顧客は多いが、いきなりクラウドに移行する準備が整っている顧客は少ない」と沼本氏は語る。このオプションでは、企業ユーザーは業務データをソフトウェアプロバイダーに託さなくても、Office WebでSaaS方式を試すことができるという。

 一方Googleは、Office Webの配布オプションに対して冷ややかな見方をしている。Googleの広報担当者は「Microsoftのクラウド進出を歓迎する」とeWEEKの取材で語った。これは、Microsoftが自社の人気ソフトウェアのオンライン版を提供するのが遅いことを皮肉ったものだ。Googleは2007年2月に、企業向けスイートとしてGoogle Appsをリリースした。さらに同広報担当者は次のように述べている。

 「企業ユーザーはクラウドに移行したいという意思を明確に示している。データセンターと従業員のPCの両方において伝統的なオンプレミス型ソフトウェアの束縛から解放され、サーバの購入と導入、アップタイムの維持、ソフトウェアのアップデート、セキュリティホールへのパッチ適用といった重荷から社内のITリソースが解放されることを望んでいるのだ。選択肢があるのはユーザーにとって良いことであり、Microsoftの方向性はコンピューティングの将来はクラウドにあることを再確認させるものだ。当社としては今後も、ホステッド/マルチテナント型の真のクラウドソリューションを、段階的にではなく今すぐ求める顧客の声に耳を傾けるつもりだ」

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