プライベートクラウド

米Forresterのアナリストが語る――プライベートクラウドの現状と今後の展望システム構築の新標準

米ForresterでITインフラ担当のプリンシパルアナリストを務めるジェームズ・スタテン氏に、プライベートクラウドの現状と今後を聞いた。

» 2009年08月04日 08時00分 公開
[構成:怒賀新也,ITmedia]

 米ForresterでITインフラを専門とするプリンシパルアナリスト、ジェームズ・スタテン氏にプライベートクラウドの現状と今後の展望について語ってもらった。

スタンテン氏はブレードサーバ、キャパシティ・オンデマンドおよびユーティリティコンピューティング、クラウドコンピューティング、データセンター、グリッドコンピューティング、サーバ仮想化、x86サーバなどを担当している

ITmedia プライベートクラウドの現状と今後についてどのように考えていますか。

スタテン 実際のところ、Forresterでは「プライベートクラウド」という用語は不明確なため、あえて使っていない。企業が自社内のデータセンターに構築するクラウド環境を「インターナルクラウド」と呼んでいる。一方で、企業のためにサードパーティーのプロバイダーが構築し、管理する専用のクラウド環境を「ホステッドクラウド」と定義している。

 現在、実質的なインターナルクラウドはほとんど存在しない。原因はインターナルクラウドを実現するためのサーバ仮想化ソリューションが十分に成熟しておらず、企業組織にインターナルクラウドを導入し、使いこなす能力がまだ備わっていないところにある。

 インターナルクラウドではセルフサービスポータルを自動化する必要がある。IT部門の担当者がビジネス部門向けに仮想環境を割り当てたり、リソース消費量を監視したりといった作業をしなくて済むようにするためだ。こうした自動化を実現する技術は入手可能だが、比較的新しいものであり、十分な利用経験を持つ企業はほとんどない。

 向こう5年以内に状況は好転し、インターナルクラウドを導入する組織が増える見込みではあるが、企業側の準備態勢に留意する必要がある。5年後でも、リソースシェアリングに適応していない企業は、インターナルクラウドへの準備が整っていないことになる。結果的に、ほとんどのインターナルクラウドは、まずテストと品質保証の目的で導入されることになるとわれわれは予測している。

ITmedia  企業にとってプライベートクラウドを利用するメリットは何でしょうか?

スタテン インターナルクラウドとホステッドクラウドにはメリットとデメリットがある。それぞれについて見ていきたい。

インターナルクラウド

 インターナルクラウドの利点は、企業のニーズに合わせて設定でき、希望通りの方法で保護し、外部の目から完全に遮断できることにある。だが、これは設定、運用、管理をすべて企業内で実施することを意味する。インターナルクラウドは従来のインフラよりはるかに効率良くシステムを管理できるが、すべての業務をインターナルクラウドに移行するのでなければ、従来のインフラ管理も引き続き実施することになる。

 インターナルクラウドのリソースプールは、少なくとも初期の段階では比較的小規模になりがちだ。IT部門は設備投資を正当化する必要があり、作業量に応じた規模でしかリソースを投入できないからだ。

ホステッドクラウド

 インターナルクラウドと同等のメリットに加え、ホステッドクラウドでは、企業はシステムを管理する必要がなく、単に運営コストを支払うだけでプロバイダーのリソースを使ってクラウド環境を拡張できる。ホステッドクラウドでは「クラウドバースティング」を実行しやすい。クラウドバースティングとは、必要に応じてセキュアな境界をパブリッククラウドにまで拡張することで、ホスティングされているクラウド環境をオンデマンドで拡大することだ。

ITmedia  企業にとって、プライベートクラウドを利用するときの課題は何ですか?

 インターナルクラウドの主な課題は、企業自身で管理とメンテナンスを実施する必要がある点だ。一方、ホステッドクラウドの課題は、クラウドを完全に外部から隔離された独立した環境にしておこうとしたときにクラウド全体の使用料を支払わなければならず、それでは従来のホスティングサービスとさほど変わらないという点だ。

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