「ウェブサービスで成功したい!」その思いで“ムキ”になって仕事に打ち込む渋谷の社長は、執念の人なのでした。
藤田さんとの馴れ初めといえば、当時、サイバークリックでのお仕事でしょうか。「姉さん事件です」というネタを仕込んだバナーを作って、それが藤田さんにすごく喜ばれたことを、忘れられないわたしなのでした――。
有馬 うれしかったですよ。「姉さん事件です」というネタを仕込んだバナーを作って、それが藤田さんにすごく喜んでいただけたこと。
藤田 当時はクリエイティブのほとんどを、お願いしていたようなものですよね……。サイバーエージェントのコーポレートサイトも。あるあるネットもそうでしたよね。そういえば以前、堀江さんが“あるあるネット”(注:1999年に、サイバーエージェントとオン・ザ・エッヂが共同で運営していた検索エンジン)を一生懸命やらなかったことを、とても悔やんでいましたよ(笑)。「サーバを分散させる発想が、既にその時にあったんだ。あれをやっていけばウチはGoogleになれたのに!」って。
有馬 あはは……。
藤田 メジャーなオンラインメディアにもOEMで提供していたので、オーバーチュアが成功したモデルを、1999年に実施していたということになります。あれに注力すべきだった、というのは同感です。当時はまだ、“検索結果を売る”という発想が新しかったですしね。
ITmedia 力を入れなかった、ということに何か理由はあるのですか?
藤田 言い訳をさせてもらうと、当時、堀江さんが色々な事業に手を付けていて、集中力がなかったんです(笑)。
有馬 確かにあの頃はオン・ザ・エッヂとして、自社事業をたくさん立ち上げようとしていたと思います。
藤田 後日、拡大路線に走ったのは、僕のせいだって言われましたよ。彼によると、「上場なんて考えてもいなかったのに、藤田さんが上場を目指しているのを見て、その気になったんだ」って……。
有馬 今のサイバーエージェントって、“ユーザーとの向き合い方”はどうなっているんですか?
藤田 昔とはずいぶん変わりました。特にここ4、5年は、「メディアとして成功したい!」という強い思いがあります。ネットを使い、ネットでユーザーと対話し、そこでユーザビリティを上げ、面白いコンテンツを企画する、ということに集中して、時間を使っています。
ITmedia プラットホームとしてはやはり、ブログが起点ということでしょうか。
藤田 Ameba(アメーバ)は、もはや単なるブログサービスというより、コミュニティもあれば、ブログもある、というようなプラットホームになってきましたね。
ITmedia オンラインにおいて、プロフェッショナルがコンテンツを作って読者に届けるというモデルについてはどのようにお考えでしょうか。
藤田 インターネットのごく一部の場所以外は、本当に“有象無象”の情報があふれているので、プロによるコンテンツはとても重要だと思っています。ただ、Amebaの中でアメーバニュースを提供していて感じるのは、ビジネスが成立する範囲は難しいのかな、ということです。
ITmedia ページビューを高めれば、それがすぐに収益になるわけでもありませんし。
藤田 ページビューという影響力はすごい。でも、収益にする方法が難しいんですよね。
ITmedia 一口に「オンライン広告」といっても、ケータイ向け広告の比重も高まっています。
藤田 ケータイは侮れないですよ! 僕はネットの長い記事でも、あえて移動中にケータイで読んでいます。PCで読むより、ずっと頭に入りやすいです。
有馬 アメーバも、ケータイに特化したブログだと言えるかも。
藤田 ある時点で、「ケータイのサービスは、ケータイのユーザーに向き合わないとダメだ!」と思ったんですね。インターネットといっても、PCとケータイではユーザーの行動が違う。変わりましたよ、僕が。もともと営業畑の出身で、そういったイメージが今でも強いですが、今はメディアプロデューサーとしてユーザーやサービスと向き合っている。キャリアチェンジですよ(笑)。
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