ソフトバンクで身につけた仕事術は生きるコミュニケーションパスは最小限に(1/2 ページ)

著書『ソフトバンク流「超」速断の仕事術』から、複数の仕事を並行して実施することの重要性を説明します。

» 2009年08月31日 13時30分 公開
[大木豊成,ITmedia]

 2001年6月8日夜8時。日本橋箱崎町のとあるビル。わたしの目の前、2メートルくらいのところに「孫正義」が立っていた。当時のわたしにとっては、孫社長というよりも、「雲の上の人、孫正義」である。その孫正義が、目と鼻の先に立ち、これから始めるADSL事業について、熱く語りはじめた。

 わたしの著書『ソフトバンク流「超」速断の仕事術』(ダイヤモンド社)の「はじめに」は、このように始まります。

孫正義はスーパーマン?

 「孫正義」といえば、わたしが出会う直前までナスダックジャパンの創設や、日本債券信用銀行(現:あおぞら銀行)買収などで有名だった、テレビの向こうの人であり、雲の上の存在でした。

 孫社長には5分以内の時間しかもらえないとか、すべての判断は5分以内だといった逸話しか聞いていないわたしでしたが、その日からしばらくの間は、一日15時間以上孫社長と一緒に過ごすことになります。

 経営者の悪口を言う会社員は少なくありませんが、孫社長の周りの人たちも例外ではありませんでした。ですが、目の前にいる孫社長は、悩み、笑い、ときには怒り、普通の人と変わらないように見えました。

 しかし、ひとたび聴衆を前にプレゼンテーションを始めると、そこはスーパープレゼンテーターです。聴衆を笑わせ、惹きつけてしまいます。わたしたちも、時として聞き入ってしまいそうになります。ステージの下にいる社員ももちろん、孫社長のプレゼンテーションを聴いていなくてはならないですが、聞き入っていてもいけないわけです。

 ソフトバンクは、発表会経営などと揶揄(やゆ)されたこともありますが、孫社長が「やる」と決めたことはやり遂げる実力が社員にはあります。最近では、ベンチャー経営者が社員に不満を持っている話を聴くことが多いのですが、もっとも多い不満は「社長が決めたことを社員がやらない」ということです。

社員にも責任はある

 最終的には経営者が責任を取るのが会社であるわけですが、プロセスにおいては社員にも十分責任は存在します。「はい」と言っていたのにやらない。これは、責められてもしょうがないところです。しかし、実社会においては、「はい」と言っていたのにやらない社員も少なくないようです。

 わたしたち社員が考えなくてはならないことは次の通りです。

  • 1.「はい」と返事をした事実
  • 2.「はい」と返事をしたのに、できていない事実
  • 3.「はい」と返事をしたのに、できていない理由(原因)
  • 4.「はい」のゴールを達成するために必要なこと(リソース、スキルなど)
  • 5.「はい」のゴール達成までのマイルストーン

 社員だから何でもやらなくてはいけない、というものではないと思います。しかし、それが会社の求める方向性である以上、どうすればできるのかを考えなくてはなりません。もし、自分が適任でないのであれば、勇気を持ってその旨を申し出る必要があります。出来ないのだから出来ない、なぜならこういう理由だからということを伝えるということです。

やり遂げるロジックを考える

 一度引き受けた以上は、何としても達成することを考えるべきだと思います。自分一人で出来ないのであれば、どういう人材がいれば良いのか、何ができる人が必要なのか、それは何人くらい必要なのかです。

 わたしが一緒に仕事をした人の中にも、むやみやたらと人数を増やそうとする人がいます。「10人必要です」「100人必要です」といった具合に、切りの良い数字で報告してきます。しかし、それは鵜呑みにせず、数字の根拠について聞いてみることが大切になります。「誰が」「何を」「どのように」するから、だから何名必要である、といったように、です。

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