メーリングリストを120%活用するテクニックオープンソースソフトウェアの育て方(5/5 ページ)

» 2009年09月01日 00時01分 公開
[Karl Fogel, ]
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アーカイブ

 メーリングリストのアーカイブを設定する技術的な方法は、使用するメーリングリスト管理ソフトによって異なるので、本書では詳しくは取り上げません。アーカイブツールを選択したり設定したりする際には、以下のような点に注意しましょう。

  • 迅速な更新

 少なくとも、実際に投稿があってから1時間後くらいにはその投稿がアーカイブされていてほしいものです。可能なら、実際に投稿があった瞬間にアーカイブ処理も同時に行うべきです。そうすれば、その投稿がメンバーに配信されたときには既にアーカイブにも同じ内容が存在することになります。それが無理だとしても、少なくとも1時間おきくらいの頻度でアーカイブの更新を行ないましょう(アーカイブソフトによっては、デフォルトでは1日に1回しかアーカイブを行なわないものもあります。しかし、メーリングリストのアーカイブ処理としては、事実上これでは使い物にならないでしょう)。

  • 参照の永続性

 メッセージがいったんあるURLにアーカイブされたら、その後ずっと同じURLでそのアーカイブにアクセスできるようにすべきです。アーカイブを再構築したりバックアップから復旧したり、あるいはそのほか何らかの修正を加えたときにも、いったん公開したURLはそのまま変わらないことが望ましいでしょう。同じURLを保つようにしておけば、サーチエンジンに捕捉されやすくなります。これは、利用者にとって大きな利点となるでしょう。URLを保ち続けるよう心がけるもう1つの理由としては、メーリングリストの投稿やスレッドがバグ追跡システム(本章の後半のバグ追跡システム項を参照してください)やほかのプロジェクトのドキュメントからリンクされることが多いこともあります。

 理想を言えば、メールをメンバーに配信する際に、そのメッセージがアーカイブされているURLをヘッダに含められるようになっていればなおよいでしょう。そうすれば、そのメールを受け取った人はわざわざアーカイブサイトを訪れなくてもそのメッセージがアーカイブされている場所を知ることができます。ブラウザを開いて何らかの操作をするのは時間の掛かる作業なので、それが省けるだけでも非常に便利です。このような機能を持つメーリングリスト管理ソフトウェアがあるかどうかは、わたしは知りません。残念ながら、わたしが今使っているソフトウェアにはそのような機能はないようです。しかし、どこかにそんなソフトウェアがあるのではと期待しています(もしあなたが新たにメーリングリスト管理ソフトウェアを開発するのなら、ぜひこの機能を実装してください。お願いします)。

  • バックアップ

 当然、アーカイブのバックアップとバックアップからの復旧の方法は簡単な方がよいでしょう。言い換えれば、アーカイブソフトがブラックボックス化してしまってはいけないということです。あなた(もしくはプロジェクト内の誰か)はメッセージが実際にどのように保存されているかを知っている必要があり、また、必要になったときにはそこからアーカイブを復元できるようにしておかなければなりません。プロジェクトにとって、アーカイブの内容は宝物です。万が一アーカイブを失ってしまうことがあれば、貴重な記録を失ってしまうことになります。

  • スレッドのサポート

 個々のメッセージから、そのメッセージが属するスレッド(関連するメッセージのまとまり)へ移動できるようにしておく必要があります。また、各メッセージ個別のURLとは別に、スレッドを表すURLもあるとよいでしょう。

  • 検索機能

 メッセージの本文や送信者、件名などによる検索機能をサポートしていないアーカイブソフトなんて、使い物にならないといっていいでしょう。アーカイブソフトの中には、単にGoogleなどの外部のサーチエンジンに処理を任せているだけのものもあります。機能がないよりはましですが、検索機能を自前で実装している方がよりきめ細やかな処理ができます。例えば、タイトルだけを対象に検索したり、本文も含めて検索したりといったこともできるでしょう。


 上に挙げたのは、アーカイブソフトを選択する際に注意する点として技術的な面にしぼった一覧です。実際にみんなにアーカイブソフトを利用してもらうことにどのような利点があるのかは、アーカイブを目につきやすくする方法項で取り上げます。

ソフトウェア

 メーリングリストの管理やアーカイブの作成用に、さまざまなツールがオープンソースで公開されています。あなたのプロジェクトを公開しているサイトで何かのツールが用意されているのなら、それを使えばいいでしょう。しかし、もし自分で新たにインストールする必要があるのなら、幾つかの選択肢があります。わたしが実際に使用したことがあるのはMailman、Ezmlm、MHonArc、そしてHypermailです。しかし、それ以外のソフトウェアが劣っているわけではありません(また、当然のことですが、わたしが知っているソフトウェアだけがすべてではありません。それ以外にもさまざまなものがあるはずなので、これを完全なリストとはとらえないでください)。

メーリングリスト管理ソフトウェア

  • Mailman――独自のアーカイバが組み込まれていますが、プラグイン形式で外部のアーカイバを使用することもできます
  • SmartList――メール処理システム「Procmail」と組み合わせて使用するためのものです
  • Ecartis
  • ListProc
  • Ezmlm――メール配送システムQmailと組み合わせて使用するように設計されています
  • Dada――なぜかサイト上では隠そうとしているようですが、これはフリーソフトウェアで、GNU General Public License の下で公開されています。また、アーカイバも組み込まれています

メーリングリストのアーカイブ用ソフトウェア

  • MHonArc
  • Hypermail
  • Lurker
  • Procmail――SmartList に同梱されているソフトウェアです。通常のメール処理システムなのですが、アーカイバとしても使えるようです

著者:Fogel Karl

翻訳者:高木 正弘

翻訳者:Takaoka Yoshinari(a.k.a mumumu)

製作著作 © 2005, 2006, 2007, 2008, 2009 Karl Fogel, 高木正弘, Yoshinari Takaoka(a.k.a mumumu), under a CreativeCommons Attribution-ShareAlike (表示・継承) license (3.0, 2.1-jp)


よいフリーソフトウェアを作ることは本質的に価値のある目標です。その方法を模索している読者の皆さんが、本連載「オープンソースソフトウェアの育て方」で何かのヒントを得てくだされば幸いです。


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