ITIL書籍「サービス・ストラテジ」で定義されている、サービス戦略のための活動について説明しよう。
前回にも触れたとおり、「サービスストラテジ」では、サービス戦略のための活動は次の4ステップだと解いている。
今回は、その2番目のステップである「提供内容の開発」」を見ていくことにしよう。
ITサービス・プロバイダにとって、自身がどのような能力を持っているのか、どのようなサービスを提供できるのか、ということを冷静に分析することは重要である。例えばワイヤレスコンピューティング環境を提供するノウハウがあり、現地販売員にワイヤレス端末を持たせて売上管理を行い、販売員の生産性を高めることに貢献するのであれば、サービス・プロバイダは顧客にワイヤレス環境を提供することによって価値を提供していることになる。
このような、「顧客のビジネス・ニーズを満たすためにITサービス・プロバイダが活用できるすべての機会」のことを「ターゲット市場」という。言い換えればターゲット市場とは、ITサービス・プロバイダが、1つあるいは複数のサービスを用いて顧客に価値を提供できる場のことである。ITIL書籍では「機会」と表現しているのが少し難しく感じるが、あまり難しく考える必要はないだろう。重要なのは、次の2つを正しく理解することである。
ビジネスニーズのないところにターゲット市場は生まれないし、ビジネスニーズがあったとしてもサービス・プロバイダ側に価値を提供できる能力がなければそこはターゲット市場ではない(とはいえサービスを提供しないわけにもいかないから、実際はサードパーティの力を借りることになる)。ターゲット市場は、顧客が求める成果によって定義されるのである。
顧客が求めるサービスを、顧客が求める成果という考え方で定義することは非常に重要である。これを「成果ベースのサービス定義」という。何が顧客にとって価値があるか、という観点でサービスを定義することは、サービスが顧客に正しく価値を提供できるようになるばかりでなく、サービスマネジメントのすべての側面を「顧客への価値の提供」という観点で計画し、実行できることにつながる。これは ITIL v3が目指す「事業とITとの統合」に結び付く(ITIL v2の時代には、「事業とITとの整合」といっていた。ITIL v3ではそれをさらに進化させた考え方が導入されている)。
ここで、ITIL v3なりの「サービス」の定義を、もう一度復習しておこう。サービスとは次のようなものである。
「顧客が特定のコストやリスクを負わずに達成する必要のある成果を促進することによって、顧客に価値を提供する手段」
これは ITIL書籍にも書かれていることなのだが、正直なところ、筆者にはピンとこない。筆者なりに言い換えると、次のようになる。
「サービスとは、顧客が必要以上にコストやリスクを負うことなく、目標を達成できるようにしてあげること」
――これによって顧客が感謝すれば、そこに「価値」があるというわけである。顧客の視点から、どんな成果を期待しているのか、どんな価値を望んでいるのかという観点でサービスを定義し、開発することが望まれる。
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