伝説のWebマスターに会う――デイリーポータルZ 林さん有馬あきこのはじめましてインターネット(2/3 ページ)

» 2009年10月12日 08時00分 公開
[聞き手と構成:有馬あきこ&編集部,ITmedia]

「やってみる」という経験が大事

――せっかくなので、今後のDPZの展望については。

 必ず聞かれると思って、会社で考えてたんですけど、“今のまんまだと、このまんま”としか答えようがない(笑)。

有馬 以前、Webやぎの目に、「DPZはどこまでいってもメジャーマイナー」ってコメントしてましたよね……。

 そんなこと、書いたかな(苦笑)

――最近はCGM(Consumer Generated Media)が浸透しつつありますが、DPZは“プロの書き手”が発信するメディアとしての位置付けですよね。

 コンテンツについて真面目な話をすると、ライターを集めて記事を書くというやり方には、限界を感じています。もちろん“書けるし、面白い”というライターは増やしたいですが、そうじゃないやり方も考えたい。例えば「やり方」と「やる事」を僕らがルールとして提示し、それに従って読者に面白いものを作ってもらうような。

 例えば昨年、「風雲!コネタ城」を始めました。元ネタは……30歳以上の人なら分かるかな(笑)。読者は「やる事」を1行投稿するだけでいい。例えば「明大前のペッパーランチは200円安い」とか「ポン酢とゴマだれ、混ぜるとウマイ」とか。ただし「やり方」は、自分の経験に基づく事と決めておく。そして、経験から面白い事を見つけられる人は「投稿」というやり方をとる。見ている人も、投稿を「実践」することで、参加して面白さを味わえるようなコンテンツにしたい。“やってみる”って事、そして経験はすごく大事です。DPZのライターには、1つだけお願いをしています。それは「たとえ面白くても、創作はやめて」ということです。経験が、大事です。

――「ちょっと見てきて」に対する「見てきた」のような?

 そうです。実は「ちょっと見てきて」では「見てきた」の数が多い。そこで分かったのですが、面白い事をやりたい人はたくさんいるんですね。ただ、やり方が分からない。「ブログやればいいじゃない」と言われても、自由度が高過ぎて、何をすればいいのかなんて分からないんです。だから、こちらでルールを作る。

 以前、“不要な物をガチャガチャに入れる。入れた物は他人が(ガチャガチャを回して)もらっちゃう”という企画をやりました。こういう、だれがやっても面白いというルール作りだけをして、ユーザーの体験を集める。その結果、面白くなったらいいなと。そうなればDPZは“自分が努力した分だけ前に進む”だけのサイトじゃなくなるし、そして40歳を過ぎても、汗だくになってまでがんばらなくていいやっていう考えもあります(笑)。

有馬 やっぱり、林さん自身が行く、体験する、書くというのは大変ですか?

 大変というか、楽しいです。書くことをやめるつもりはありません。“これは面白い!”というものは、代表して書かなきゃという気持ちもありますから。それに、先ほどの話と矛盾するようですが、やはり「プロのライターだからこそできるコンテンツ」もあると考えています。“プロだからクオリティが高い”ということではありません。匿名の読者よりもキャラクターが立ちやすいのです。「まさかあの人が、こんなことするなんて!」という面白さがあるでしょう? “匿名のだれか”ではなくプロのライターがネタをすることで、そのライターが持つ人格やキャラクターとの間にギャップが生まれ、それが面白いんです。

Z君グッズ試作品 キャラの立ち方が半端ではない林さんお手製の「Z君グッズ試作品」。拾った石を洗い、自身で塗装したもの。読者プレゼントにする予定だというが、同席の広報さんからも「重くて送料が掛かるでしょ!」とツッコまれていた――

 “キャラ立ち”したプロのライターもいるし、漠然と「面白いこと、したいなぁ」と思っている匿名の読者もいる。そんなサイトに、DPZはしていきたい。なるべく敷居の低い感じで、たくさんの人に楽しみを提供したいです。

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