NECが「クラウド指向」と呼ぶ理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年10月19日 08時41分 公開
[松岡功ITmedia]
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「クラウド指向」に込められた本質論

 それを説明するためにも、先にクラウド指向サービスプラットフォームソリューションの3つのサービス提供モデルを紹介しておこう。

 1つ目は、短期間に低コストで導入できるSaaS型のサービスモデル。共通的なフロントオフィス系アプリケーションから業種特有の業務アプリケーションまで、幅広く提供する構えだ。

 2つ目は、共同センター型サービスモデル。プラットフォームやアプリケーションなど、同一業種の複数の企業が共同で利用するための環境づくりを、NECがトータルに支援する。

 3つ目は、個別対応型のサービスモデル。基幹システム再構築の際に業務プロセスの標準化を併せて行い、統一されたプラットフォームにシステムを順次移行する。NECのデータセンターですべてサポートするケースと、ユーザー企業のデータセンターを強化してNECが運用サポートするケースがある。

 それぞれ対象となるユーザー企業の規模は、1つ目が小・中規模、2つ目が中・大規模、3つ目が大・超大規模と想定されている。

 さて、NECの「クラウド指向」に話を戻すと、上記の3つのサービスモデルの中で、「プライベートクラウド」とも言われる3つ目の個別対応型は、NECがクラウドサービスの最大のユーザーメリットとしている「初期投資の抑制」には必ずしもつながらない。むしろ、一時的にまとまった投資が必要となるケースも出てくるだろう。この点については、本コラムでも以前に「プライベートクラウドはクラウドか」と題して疑問を呈した。

 その点、NECはあくまでもクラウドサービスの最大のユーザーメリットを第一義に考えた結果、「クラウド指向」という形で柔軟性を持たせたのだろう。これは、クラウドの本質について、ユーザーの理解を得るうえで非常に重要なことだと考える。筆者が「なるほど」と感じたのはそこだ。NECには、クラウド指向の意味をもっと声高に語ってもらいたい。

 ユーザーにとって、クラウドが「雲」をつかむような話にならないようにするためにも、本質論にはこだわりたい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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