クラウド時代のデータベース新潮流

仮想化、クラウド時代におけるミドルウェアの新たな役割クラウド時代のデータベース新潮流(2/3 ページ)

» 2009年11月04日 09時38分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

ミドルウェアは「ロックインされないクラウド活用」の要

 ではポータビリティの確保とミドルウェアはどのようにかかわってくるのだろうか。情報処理システムを移転(社内運用からクラウドへ、あるいはクラウド間など)させることを考えた場合、移転先の環境で現在運用しているミドルウェアがきちんと動作するかは非常に重要な問題である。現在のクラウド環境(特にIaaSの場合)において、ミドルウェアのポータビリティを保証しているケースは非常に少ない。

 確かに、OSのレベルまできちんと移転できれば、その上で動作するミドルウェアも基本的には問題なく動作するはずである。しかし、ユーザーとしてはミドルウェアベンダーとクラウド提供者による何らかの動作保証がほしいところだろう。十分な検証環境を持つことが難しい中堅・中小のシステムインテグレーターも、アプリケーションより下層の環境について責任を負うことが難しいのが現状だ。

 つまり、ミドルウェアのポータビリティは「ロックインされないクラウド活用」を実現する上で不可欠な要素であり、今後のクラウド普及を左右するポイントであるともいえる。実際、ミドルウェアを提供するベンダーはこの重要性を意識し始めており「Oracle Database」の「Amazon EC2」サポートや、 「Azure Services Platform」における「SQL Database Services(現:SQL Azure Database)」で従来のRDBMSのデータモデルや機能との互換性を維持する方針へと転換したことなどが例として挙げられる。

ミドルウェア自身の進化

 こうした状況の中、ミドルウェア自身もポータビリティ確保に向けて新たな進化を始めている。ミドルウェアにとってのポータビリティ確保とは「ハードウェアやOSへの依存度を最小化する」ことにほかならない。例えば、可用性を実現する際にもハードウェア構成を意識せずに済むようにするといったことや、OSの機能に頼らなくても自身のリソース管理ができるといったことが挙げられる。

 代表的な具体例が「Oracle Database 11g R2」だ。複数のデータベースグリッドを集約して仮想的なサーバプールを構成し、その中で複数の業務システムデータベースを自由に配備することが可能な「Oracle Grid Infrastructure」や、ログやトレースなどといった従来はOSのファイルシステム管理下に置かれていたデータもデータベース領域とまとめて管理が可能な「ASM Cluster File System」といった新機能を備えている。ミドルウェアが自らの役割を拡大することによって、ハードウェアやOSからの独立性を高め、結果的にポータビリティを実現しようとする動きの例といえる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ