変わる世界伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年01月06日 15時30分 公開
[伴大作,ITmedia]

内需

 内需に関しては、これまで大きな部分を占めていた公共投資が大幅に削減されたので、不景気が日本中を覆っているように見えるし、実際にそうだ。

 ただし、この数年間は、公共投資の多くは投資効果の高い地域を避けてきた。政治的な配慮が優先されたため、投資波及効果があまり期待できない地方に向かう傾向が顕著だったのだ。高速道路や港湾、空港などそれに該当する。

 民主党が、あまり必要のないダム建設を中止しようとするのは誤っていない。それより、もっと投資効果が明確な羽田空港の拡張や、既に施設が整っていて、市場に近い神戸や横浜、東京港の整備、首都圏の道路整備に投資した方が渋滞の緩和などによる投資効果も得やすい。二酸化炭素(CO2)削減にも寄与するに違いない。東京、大阪、名古屋、福岡、札幌のような大都会の整備にもっと大きな投資をする方が効果が高いのである。

 また、民主党は消費サイドの活性化を図っている。景気浮揚策として短期間で効果を発揮するわけではないが、中長期的には消費マインドを高めるには効果が高い。具体的には、2010年春の「子ども手当て」の支給開始、農家の所得保障はそれなりの効果が期待できる。高速道路の無料化に関する試行も、2010年夏から地方で始まると予測されるが、地方の支援策として実質的な効果は非常に高いと評価できる。

ICT投資

 民主党の鳩山さんが掲げた政策の中心にあるのは「環境」だ。自動車、家電など輸出主体の産業に関する言及はなかった。同時に「コンクリートから人間に」という標語は、建設、土木など内需の主体である公共投資の否定につながっている。

 これに対し、米国であれ、中国は国内の景気浮揚策に熱心だ。中国が積み上がる貿易収支の黒字を国内投資に振り向けようというのは理解できるが、貿易収支で圧倒的な赤字を出している米国が景気浮揚策として資金を確保できるかといえば甚だ疑問だ。

 ただし、米国のこの試みは今のところそれなりの成果を上げている。米国の株価は一時のパニック的な水準からは脱した。このような状況を背景に、BRICsを中心にインドや東アジア、南米、オーストラリアなどで景気は好調だ。

 これらの地域は、自動車とか家電のような耐久消費財のみならず、国民の生活レベル向上のため、発電設備、道路、通信のようなインフラ投資、それに伴う生産財への投資も急速に回復している。ICT投資も活発だ。

 分かることは、これまで世界経済をリードしてきた米国の地位低下だ。日本経済はあまりにも米国への依存度が高過ぎたのだ。それが、先進国の中で、日本の景気回復の速度が最も遅れている原因になっている。世界の経済構造は確実に変化している。

 ICTに関しても、世界中の市場を対象にしてきたIBMやHewlett-Packardなどの米国企業が相変わらず世界市場をリードしているが、欧州市場で大きな地位を確保してきたAcerが、中国国内で圧倒的な地位を築いたLenovoが順調な業績を上げるようになってきた。一方で、日本市場のみに頼ってきた日本のベンダーが業績不振にあえいでいるのは至極当然だ。

 唯一の救いは、世界的な視点でマーケットを見てきた東芝が孤軍奮闘していることだ。

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