クラウド時代のセキュリティベンダーの行方Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年01月12日 09時43分 公開
[松岡功ITmedia]
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大型買収のうわさも……

 もちろん、ほかの有力な情報セキュリティベンダーもクラウド環境に対応した技術やサービスを提供し始めている。山野社長が言うように、かつてはポイントソリューションを提供するベンダーが群雄割拠していたが、ここにきて有力ベンダーはトータルソリューションを着々と整備してきている。

 ただ、情報セキュリティ分野に詳しい業界関係者はこう指摘する。

 「もはやセキュリティは、サーバインフラやシステム運用管理の分野と境界がなくなりつつある。クラウド環境ではその傾向が一層強まるだろう。たとえセキュリティにおけるトータルソリューションを保持しているとしても、そうした分野と境界を越えてどれだけ深く連携するかが、これからのセキュリティベンダーの生命線になる。ベンダーによっては独立系のスタンスから、クラウド事業を旗印にした企業連合を形成するところが出てくるのではないか」

 この点については、山野社長も「セキュリティ、サーバインフラ、システム運用管理の垣根がなくなってきているのは確かだ。ここ数年の動きをみると、サーバベンダーがシステム運用管理ソフトベンダーを傘下に収めたり、セキュリティベンダーがシステム運用管理ソフト事業に乗り出したりしている。クラウド環境でそれらの連携を一層深めることは、今後の強力な差別化戦略になるかもしれない」と同調して語った。

 さらに、別の業界関係者は比喩を込めてこんな推測をしてみせた。

 「インフラにおいてもサービスにおいても差別化戦略が問われるクラウド事業では、高度なセキュリティ対応がその大きな決め手になる。そうなると、クラウドのメジャープレーヤーは、有力なセキュリティベンダーを傘下に収めようとするだろう。インフラ寄りとアプリケーション寄りという違いはあるが、かつてIBM、Oracle、SAPといったビッグネームが有力なビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーを相次いで買収したような再編が起こるのではないか」

 同氏も含めて複数の業界関係者によると、米国では「Hewlett-PackartがSymantecを買収するのではないか」といううわさもまことしやかに流れている。独立系の最大手でさえも、そうしたうわさが流れるほどだ。何が起こっても不思議ではない。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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