静岡を地盤とした堅実経営で、世界的にも高い評価を得ている静岡銀行。その静岡銀行が、業務の手続きをまとめた「規定」の見直しに着手したのは2007年。派遣社員やパートなど、業務の担い手が変化する中、専門用語が多く、分かりにくかった規定を見直すことが、喫緊の課題となっていた。
静岡銀行が、営業店の業務改革(営業店BPR)に着手したのは、2005年のことである。そして、この営業店BPRプロジェクトの最終段階で必要とされたのが、「営業店事務取扱要領システム」であった。その背景について、静岡銀行 経営企画部 理事担当部長(IT戦略担当) 飯尾秀人氏は、次のように説明する。
「銀行業務の幅は年々広がっていますし、取り扱う商品も増加しています。一方、支店の担い手として、正行員のほかに派遣社員やパートの方々も増えてきました。このため、もう一度業務全体を見直することで、リスク管理を徹底し、同時に生産性を高め、お客様の利便性を上げる体制を再構築することが必要だったのです。そのためには、営業店BPRを通して業務を見直すとともに、その業務の進め方について書かれた『規定』を体系的に整備することが必須でした」(飯尾氏)
ここでいう「規定」とは、銀行業務の進め方が書かれた手順書(マニュアル)である。コンピュータ化以前は紙で作成・管理されていたが、IT化の進展とともに徐々に電子化されてきた。そのボリュームは、静岡銀行の場合、A4用紙換算で1万ページにおよぶという。ただし、電子化されたとはいえ、専門用語が多く、決して分かりやすいものではなかったのである。
静岡銀行が規定の見直し作業を本格的に開始したのは2006年4月。ほかの金融機関の規定と比較し、非効率な事務について簡素化・システム化・集中化の切り口から改革に取り組んで行った。
次の段階は、絞り込んだ項目に沿った新しい規定の作成、および作成した規定を載せるシステムを開発することであった。ただし、もともとA4換算で1万ページもあった膨大な規定を書き直すことは、容易な作業ではない。しかも、飯尾氏には、ただの規定閲覧システムでは意味がないという信念があった。
「営業店BPRとは、事務を簡素化・システム化・集中化して業務の効率・生産性・利便性を上げるとともに、次世代に向けた新しい営業店モデルを構築する取り組みです。従来、営業店面積の7割は事務用スペース、3割がロビースペースでした。BPRの実施でこの比率を逆転し、事務用スペースを3割、お客様をお迎えするロビーを7割へと拡大して、営業店を事務の場からセールスの場に変えていくこと、すなわち「フロント特化型店舗」の構築が重要だと考えていました。さらに将来的には、ご案内から各種手続きまでをよりスムーズに行えるナビゲーションの仕組みを実現したいと考えていました。規定はこのナビゲーションシステムのベースになるものですから、単なる閲覧システムでは不十分だったのです」(飯尾氏)
適当なシステムを模索する中、2007年の秋、幸運な出会いが訪れた。ある展示会に参加していた飯尾氏が、これだというソリューションを“発見”するのである。
「規定の項目を絞り込み、次は規定の執筆とシステムに取り掛からなければ、と考えていた矢先、ある展示会で東芝ソリューションによる「MetroCube」という製品を見せていただきました。ただし、この製品は内部統制に関連したリスク管理製品であり、ナビゲーション製品でも事務取扱要領の製品でもありません。しかし、私が思い描いていた構造でデータを扱えるため、表示部分だけを変えれば十分使えると確信したのです。そこで、表示部分のリクエストをわれわれが出し、ベンダーがそれをシステムに落とし込むという形で、共同開発を行うことになったのです」(飯尾氏)
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