ベンダーの人材に過剰感、ユーザー企業は慢性的な人材不足「IT人材白書2010」にみる業界動向(1/2 ページ)

IPAの調査報告書「IT人材白書2010」から、ベンダーやユーザー企業でITに携わる人材の意識動向やIT業界の実情が浮き彫りになった。

» 2010年05月01日 09時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 情報処理推進機構(IPA)は、調査報告書「IT人材白書2010」を公表した。ITベンダーやユーザー企業、教育機関などを対象に実施した同調査から、IT人材を取り巻く動向やIT産業の実情が浮き彫りになった。今回は「人材の需給バランス」「オフショア開発」「産業変化」の点について、調査結果を紹介しよう。

 IT人材白書は、IPAが2007〜2008年に実施した「IT人材市場動向予備調査」をベースに、2009年から公表しているもの。調査対象はITベンダーとユーザー企業(非IT業)、情報系の教育機関および卒業生、現役のIT人材、一般社会人。今回の調査では2009年秋に各対象へアンケートを実施した。

調査対象の内訳

 人材の需給バランスでは、ベンダーとユーザー企業にIT人材の量および質的変化について調査した。まずIT人材の量について、ベンダー企業では2009年度調査に比べて「特に不足はない」「やや過剰である(削減や職種転換などが必要)」と回答した割合が大幅に増えた。ユーザー企業では「特に過不足はない」の割合が微増した。しかし、「大幅に不足している」「やや不足している」の割合が2年連続で4分の3強を占めた。

ベンダーにおけるIT人材の「量」に対する不足感(出典:IPA)
ユーザー企業におけるIT人材の「量」に対する不足感(同)

 IT人材の質については、ベンダーとユーザー企業とも「大幅に不足している」「やや不足している」の割合が4分の3強を占めた。ベンダーでは、IT人材の質に不足感があるものの、量的にはこの1年間で過剰感が強まった。ユーザー企業では質と量の両面で昨年と同様に不足感が強い状況が続いている。

ベンダーにおけるIT人材の「質」に対する不足感(同)
ユーザー企業におけるIT人材の「質」に対する不足感(同)

 職種面からみたIT人材の動向では、ベンダーにおいて「PM(プロジェクトマネジメント)」や「APS(アプリケーションスペシャリスト)」といった開発系人材の割合が減少した。一方、「ITS(ITスペシャリスト)」や「ITSM(ITサービスマネジメント)」の高度な技術職や運用サービス系の人材が増加している。

 ユーザー企業では、大半の職種が前年に比べて横ばい、もしくは微減となった。しかし、社内システムの開発・保守・運用や社内IT人材の教育を担当する割合が増加している。ユーザー企業におけるIT関連業務の増減について、60.9%が「自社のIT部門で担当する業務が増えている」、39.6%が「アウトソース先に発注される業務が増えている」を挙げた。

ユーザー企業のIT関連業務の増減状況(同

 また、ユーザー企業自身が今後強化すべき業務として挙げたものは、「IT戦略策定・企画」(65.4%)、「IT投資案件のマネジメント」「社内IT人材の育成」など。子会社など外部委託を進めたい業務には「社内システムの運用管理の実施」(38.8%)、「社内システムの開発・導入・保守」(32.2%)を挙げていた。

ユーザー企業が自社にて強化を目指す業務(同)

 ユーザー企業は、システム運用などの現場業務をなるべく外部に委託し、経営戦略に紐づいた高度なIT関連業務は自社で担いたいという意向があるようだ。そうした業務を任せられる人材の育成や確保が課題となっている。

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