キャリアアップの責任は個人? それとも企業?「IT人材白書2010」にみる業界動向(1/2 ページ)

技術者のキャリアアップやITスキルに対する意識について、企業と個人の間に大きなギャップがあることが分かった。

» 2010年05月08日 09時00分 公開
[ITmedia]

 情報処理推進機構(IPA)は、調査報告書「IT人材白書2010」(概要版)を公表している。同報告書から、IT人材のキャリア形成や求められるITスキルについて、企業と個人の間に大きなギャップがあることが分かった。

現状に満足も将来に不安

 ITベンダーなどで働く現役IT人材1000人を対象に実施したアンケートによると、現在の業務環境に満足しつつも、将来のキャリアアップに不安を抱える人材が多いという。

 仕事や職場の環境に対する満足度では、回答者の半数以上が「休暇の取りやすさ」「職場の雰囲気」「プライベートとの両立」「労働時間」「仕事の内容」「仕事の充実感・達成感」に「満足している」「やや満足している」と答えた。IPAは、「ITの仕事につきまとう“3K”のイメージと実態は異なる」と分析している。

仕事や職場の環境に対する満足度(出典:IPA)

 また、回答者の約8割が「仕事を続ける限り、キャリアアップしたい」と意欲を示したものの、「将来のキャリアが不安である」との回答も7割以上あった。具体的には、「現在のスキルが将来も通用するか分からない」(49.2%)、「自分の会社が将来も今と同じ状態にあるか分からない」(34.2%)、「新しい技術を習得するのが負担になる」(32.6%)、「勤め続けても望む給与を得られない可能性がある」(32.0%)などだった。

将来のキャリアへの不安点(同、クリックで拡大)

 自身の所属する会社について、「会社のビジョンが明確である」という答えは35.3%、「今後も成長・発展すると思う」という答えは34.7%にとどまった。ビジョンが明確であると答えた回答者の多くは、今後も成長・発展すると思うとも答えていた。一方、ビジョンが明確ではないと答えた回答者の多くが、今後も成長・発展するとは思わないと答えていたという。

 キャリア形成の支援について、52.0%は「会社からキャリアプランを明示されていない」と答えた。キャリアアップ制度の充実でも、46.9%が「あまり十分ではない」、26.4%が「まったく不十分である」と回答した。

 キャリアアップの責任所在について、IT人材の12.2%が「全面的に企業が責任を負うべき」、50.5%が「どちらかと言えば企業が責任を負うべき」と答えた。一方でITベンダー(有効回答621社)は、56.4%が「どちらかと言えば個人が責任を負うべき」と回答しており、全面的に企業が責任を負うべきとの回答は2.1%にとどまった。

キャリアに関する責任所在(同)

 企業規模別に見た場合、従業員5001人以上の企業に所属するIT人材の14.0%は全面的に企業が責任を負うべき、56.0%がどちらかと言えば企業が責任を負うべきと回答した。同100人以下の企業に所属するIT人材の回答は、それぞれ10.0%、44.4%だった。

企業規模別に見た責任所在の意識(同)

 これらの結果から、IT人材のキャリアアップについて企業と個人の間に大きなギャップがあることが明らかになった。また、規模の大きな企業に所属するIT人材は企業に依存する傾向が強いことも分かった。

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